美は細部に宿る
様々な著名人が愛したこの言葉。
バレエの美しさを語るにも、これ以上ないほど素晴らしい表現です。
細部に美が宿るためには、細部を洗練させていくことが重要です。
たとえば、手の指先です。
バレリーナの手の指先をじっと見たことはあるでしょうか。
ふつうはつい無意識に使いがちな指先も、バレリーナたちは美しく見えるように計算して形を作っています。
- 指の関節の角度
- 指同士の間隔・重なり方
- 腕全体の動きや形との調和
- 全身のポーズの中での微調整
とても繊細なのです。
バレエではこうした美しさをつくるための規律があります。
規律にしたがうことで、無駄がなくなり洗練されていきます。
具体的には、指の関節をやさしく長く伸ばし、親指を手のひらに隠して、5本の指を中心に集めます。筆の先のように細長く。
手のひらの中は、少し空間を感じます。
こんな風にペンを持って練習したこともあります。
とにかく、頭で考えるよりも、指先に覚えさせて形を染み込ませます。
なぜなら、他のことに気を取られて指先が乱れないように。
難しいジャンプや回転やバランスなどをしているとき、どうしても指先はそっちのけになりやすいものです。
だから、無意識に美しい手の形を保てるレベルまで訓練します。
規律を守りながらも豊かな表情をもたせていく
次のステップは、規律を逸脱しない範囲で、音楽や情景に合わせた豊かな表現につなげていきます。
ガチガチの機械的なロボットのようでは表情も優雅さもありません。
バレエ独特の繊細で甘美な音楽と溶け合うような指先へと仕上げていきます。
雨のしずくが肩に落ちて、それが腕をつたって手首、手の甲、手のひら、指先まで流れ落ちるように・・・
これは私がよくイメージしているもののひとつです。
雨のしずくは、なめらかな面でないとつたい落ちていかないはず。
肩から腕・手の指先までを調和させて、末端に気を抜くことなく整えていきます。
指先はよくもわるくも語ってしまう
もし、どんなにデコルテが美しい女性がいても、手の指先がぶっきらぼうでいたら、洗練度合いも弱まってしまうと思いませんか。
ネイルのデザインよりも、指先の使い方そのものがその人を語ってしまうような気もします。
愛しさも、慈しみも、憎しみも、哀しみも、詩的に語りかける指先を作っていくのです。
手の指先一本一本にも美意識を向けて。 細部に美しさを宿らせてみましょう。