バレエヨガインストラクター三科絵理のブログ

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地球にラブレターを書くような仕事 ヴィム・ヴェンダース監督映画「母なる地球に還る セバスチャン・サルガド」を観て

先日素晴らしい映画をみて、人生観まるごと衝撃を受けた作品がありました。

「母なる地球に還る - セバスチャン・サルガド 地球へのラブレター」

〝地球へのラブレター〟というタイトルと、好きなヴィム・ヴェンダース監督の作品ということもあって、直感ですぐに観ました。

セバスチャン・サルガド(Sebastião Salgado)はブラジル生まれのフォトグラファーです。でも、単なる「写真家」という枠組みではおさまらない、環境保護活動を実践している人物です。

経済学を学びエコノミストとして働いたのち、写真に情熱をみつけた彼は、報道写真家に転身します。 世界の紛争・難民キャンプの土地や、飢餓に苦しむ人々のもとへ取材しに回っては、写真集を出版し、世界中から注目を集めました。

タンザニアの難民キャンプ

映画で写真を一枚ずつ見つめましたが、悲惨と驚きで涙をうるませる余裕もないほど、絶望的な光景ばかりでした。人類の歴史でいうなら「影」の部分。世界史の授業では一瞬で終わってしまうようなところに光を照らし出しているような、見ていなかったことを見つめさせられた気持ちでした。 セバスチャンの「人類に対する信頼を失った」というセリフが、すべてを物語っていました。

でも、不思議なことに ”残酷なほどに美しい・・・” という感覚も生まれていました。 「美しいと感じてしまった自分は感覚がおかしいのかな?」と不安にもなりましたが、実際、情景に対して”美しすぎる”という批判があるそうです。(私自身は、批判の感情はありません。純粋に感じたまでです。)

湾岸戦争後クウェートの大規模油田火災

おそらく、なにも考えずにただ撮影したら、新聞やニュースで目にするような、悲しみで腹わたをえぐりとられるような光景になるはずなのです。悲惨すぎて、美しさなど存在し得ない戦地や難民キャンプの姿になってしまうと思います。

でも、セバスチャンの写真は、人類への慈しみと真実がこめられているからこそ、美しさが宿る。そう確信しました。

彼の姿勢には、「共感」があります。

現地の人々の生活を肌で感じて寄り添いながら、心から感じた上で、大切に一枚一枚を撮影していたといいます。それが、一枚一枚にこもっているから、美しく感じられて、芸術となり得るのだとはっきり感じました。

彼の写真が美しすぎるという批判には、私はまったく反対です。貧困や苦難を写真に撮るときは、ある種の尊厳を被写体に与え、のぞき趣味に陥ることを避けなくてはなりません。それは簡単ではなく、レンズの前の人々とよい関係を築いて初めてできることなのです。それができる写真家は稀です。写真家の大半は、現場に到着するや何枚か写真を撮影して帰って行きます。セバスチャンはそういうふうには仕事をしないのです。彼は人々と一緒に生活し、気持ちを分かち合い、時間をかけて彼らの状況を理解します。そして彼らに感情移入するのです。彼は人々のため、彼らに声を与えるためにこの仕事をしているのです。(映画パンフレットP12「インタビュー ヴィム・ヴェンダース」より)

とてつもなく大きな人類愛と慈しみのあるセバスチャンが見つめる視点だからこそ、わたしたちにも見えてくるものがあるのです。彼が「神の目を持つ」といわれる所以をはっきりと感じました。

そうした真摯な姿勢で撮影し、悲惨な情景を見つめ続けた結果、彼の心がいつしか病んでしまったそうです。心身に深く悲しみが突き刺さり、体調を崩してしまったそうです。

治療のため母国ブラジルの実家に帰ると、子供時代にあった緑豊かな森が、干ばつで無惨な「はげ山」に変わり果てていました。 ふつうなら立ち直れないほどショックですが、彼の妻が、「森を取り戻そう」と励ましたそうです。 家族で10年かけて250万本の苗木を植え続け、結果、見事に森林が蘇りました。 滝や沢などの水源も1000以上蘇り、野生動物もかえってきたそうです。 環境保護事業として評価され、私有地だった実家の森が、いまや環境保護区に指定されています。

自然の持つ再生・治癒する力は、わたしたちが想像する以上に大きいことを感じました。そして、自然を愛するセバスチャンの家族の功績に感動しました。 彼の病んだ心も、森林とともに治癒されていったそうです。

そうして生まれた最新の写真集「GENESIS」は、報道写真とは一線を画し、地球の原始から残る美しい自然を主題にしています。

映画のキャッチコピー「人類に向けた、地球へのラブレター」の意味を深くかみしめました。

彼のような、地球にラブレターを書くように仕事したい、と思いました。 別に、自然を守るとか保護活動をするといった範囲ではなく、太古に生まれ現代のわたしたちにまで命をつないできた人類という存在に対しても、いろんな意味でラブレターを遺せるように仕事したいと感じました。

自分一人にできることは小さいものです。でも、小さいからとあきらめていては、なにも進まないと奮い立たされました。

これからどう成長していったとしても、心を見失いたくない。

愛情を持つこと。
愛情を注ぐこと。
愛情を受け取ること。
愛情をいろんな形におこしていくこと・・・

もちろん、簡単にはいかない時もあるかもしれない。

でもその循環がピュアでクリーンである限り、美しい未来が待っていてくれると思うのです。


『セバスチャン・サルガド/地球へのラブレター』予告編 - YouTube

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