バレエヨガインストラクター三科絵理のブログ

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ムンク展 叫びのイメージが変わりました!

実物のムンクの叫びを見に、昨日「ムンク展 共鳴する魂の叫び」に出かけてきました!上野の東京都美術館で開催されています。

iPhoneでもムンクと打ち込むと😱ムンクマークが出てきますよね。かなり高価な値打ちが出るほど世界的に知られてみんなが分かるという作品としてはモナ・リザをしのぐという見立てもあるようですね。

今ではノルウェーの国民的画家となったムンクですが、とても波瀾万丈の人生で、展覧会の冒頭はなんだか悲しみに打ちひしがれた世界でした。

ムンクのお母さんが子供時代に亡くなり、大好きだったお姉さんも結核で亡くなってしまったという悲しみ。死と隣り合わせの生活だったことで「私は死とともに生きている」と常に感じていたそう。死生観からも若い頃から画家になることを決めました。でもムンクの選択を快く思わなかった父とは反発していたそうです。

それでも芸術への情熱をたやさなかったムンクは徐々に自分の作品の頭角を現していきます。

「芸術は告白である。」

その言葉の真意には、エゴイズムという意味よりも、自分自身の生き生きと経験した人間らしい感情や、生と死、愛を作品に表すことだったのだろうと理解しました。

若いうちの作品から死人のモチーフがたくさん登場していて、それらはお母さんやお姉さんだったようです。大好きだったからこそ、死人とはいえ愛でも合ったのでしょうね。同じモチーフを何度も繰り返しながら、当時の写実的な作品や室内画を穏やかに書くことよりも生きた人間のリアリズムを追求していった結果が叫びだったのでしょう。

「叫び」の作品は、他のそれまでの作品と違う何かを持っていて、なぜかじっと眺めていられました。(1910年? The Scream テンペラ・油彩、厚紙)

そのひとつは、色彩だなと私は感じました。

他の暗い作品というのは黒が多く、またはガイコツが異様に白くて不気味な絵もありましたが、叫びは色彩が鮮やかで豊かなのです。

ムンクは自然の持つ色彩が好きだったようですし、絵を描くときも屋外で描いて、雨ざらしにしたりしばらく汚して、作品を「子どもたち」と呼び大事に育てていたんだそう。他の作品でも、なんというか絶妙な色の溶け具合で、フィヨルドと白夜のノルウェーを生きた画家だから引き出せるのかなという繊細な色使いが多々ありました。

叫びの空は、繊細というよりもダイナミズム。赤とオレンジ、それから海の色と緑色、さらには人物から空気ににじんでいるようなどんよりとした色の混ざり合い。

日没の空。それが絶望の彼方にいたムンクにとっては「血」のイメージだったそうです。

不思議と黒い色はなく、絶望なんだけれども自然に溶け合う色のバランスが絶妙に美しくも感じられました。

ただ、単に美しいわけではない。

綺麗事よりももっと本音で語り合うようなときの、心の底のフタを開けたような心境。

顔の輪郭の歪みも、重要なバランスを醸し出していて、それまでの作品の流れからすると急にぐっと完成した印象を受けましたし、この作品への思い入れはひときわ強かったことが想像できました。

夕暮れに道を歩いていた
一方には町とフィヨルドが横たわっている
私は疲れていて気分が悪かった
立ちすくみフィヨルドを眺める
太陽が沈んでいく
雲が赤くなった
血のように
私は自然をつらぬく叫びのようなものを感じた
叫びを聞いたと思った
私はこの絵を描いた
雲を本当の血のように描いた
色彩が叫んでいた
この絵が〈生命のフリーズ〉の《叫び》となった

これを読んで納得したのです。

この叫びは、ムンクが雄大なフィヨルドを眺めながら日が沈む真っ赤な夕景から聞こえてきた引き裂くような叫びなんだと…。

そしてその後の作品では、ムンクと恋愛関係になった女性たちをモデルにしながら、ちょっと薄気味悪いマドンナや、吸血鬼が出てくるのですが、もっと思考が変遷していった先さらにムンクの国民的支持を得た「太陽」という作品に、絶望の中の強い光を感じて私はぐっと心つかまれました。

大きな絵で、壁画にするための元になったようですが、絵の具のタッチが躍動的で眩しい世界が広がるのです!

こんなに辛くて暗くて生きる意味も見出せないくらい死と隣り合わせでいたムンクの目に映っていた一筋の希望が太陽になっていく、そのオセロが黒から白に一気にぬり変わっていくような神々しいパワーを感じました。

また、晩年の「星月夜」もすごく好きです。雪の降る寒い夜に屋外のアトリエからドアをふと開けると深い青色の空にきらめく星々。

自然とは、目に見える物ばかりではない
瞳の奥に映し出されるイメージ
魂の内なるイメージでもあるのだ

ムンクは生涯いろんな波瀾万丈なハプニングや不幸を経験していて、アルコール依存症もあれば、ナチスドイツに「退廃芸術」だと作品を押収されたり、事件にも見舞われ(恋人が結婚を迫ってきて銃が暴発し中指の先端を失う…これこそ叫びの絶望よ…)それでも晩年右目の視力を失う前の最後に、つかの間の穏やかな瞬間があったのではと想像させられました。本当に、絵を描くことが好きだったのだなぁと。ムンクにとっては精神のなぐさめでもあったのでしょうか。

というわけで、行く前は絶望でいっぱいの展覧会かと思いましたが、暗闇の中での希望を見出していったムンクの魂を神々しく感じられた良い展覧会でした。

モチーフもどこか時代を感じさせず、どんな時代にも普遍的に人間がもつ感情、悲しみ、嫉妬、生と死を扱っているから現代のわたしたちにもリアルに感じられるのだと思います。

みなさんもぜひムンク展ぜひ貴重な機会に出かけてみてください!