バレエヨガインストラクター三科絵理のブログ

バレエヨガインストラクター三科絵理

ベル・エポックにタイムスリップできる映画「ディリリとパリの時間旅行 Dilili à Paris」

シャネルとバレエ・リュスに関連して思い出した映画があります。

「ディリリとパリの時間旅行 」(Dilili à Paris)というアニメーション映画です。

子供向けの映画とも言われるのですが、文化や歴史のことも深く考慮してていねいに描かれているので、私は大人向けだとも言いたい作品です。

2019年9月に映画館で見て、メジャーな作品ではないため、ずっと「どこかで販売してくれないかな」と思っていたところ、オンライン視聴やディスク購入ができるようになりました。

20世紀の忘れらつつある社会問題、人種に関わる問題、平和に対する考え方、1900年前後にパリに住んでいた著名人100人を登場させるなど、20世紀の「古き良き時代」を現代にうまく甦らせている貴重な作品です。

物語は、ニューカレドニア出身の少女ディリリという賢い女の子と、配達員の青年オレルが友達になって、パリの社交界や文化人たちの交流を豪華な背景として、フィクションの事件を解決していきます。

フィクションとはいえ、風潮や実在の人物の逸話をもとにしているので、勉強になります。

画家たちがサロンで交流しながら互いの作品を評価しあっていたり、パスツール研究所で狂犬病の治療をしてもらったり、キュリー夫人の物理学の話が出てきたり。

Art & Ballet シリーズに親しんでくださっているみなさんに伝え忘れてはいけないのが、ミュシャにインスパイアを受けた私の振り付け「Lily〜ミュシャの夢」でのミューズである実在した女優サラ・ベルナールがこのフィクション事件の解決に大きな一役を担って何度も登場してくるということです。(自宅まで出てくるのですが、逸話からの再現が細かい!)

blog.coruri.info

当時のパリではサラ・ベルナールを誰もが知っていて、シャネルも観劇していたそうですから、この時代のパリってどれだけドラマが詰まっていたんだろうと思います。

そして、背景にたくさんの文化人が登場するのを見つけるのも楽しいのです。うっすら出てくるのがもったいないと思うほどですが、それがまた面白いです。

その中に、バレエ・リュスのディアギレフ、ニジンスキー、イサドラ・ダンカンがアイリッシュ・アメリカン・バーで洒脱な空気を醸して席を囲んでいるシーンがあります。

blog.coruri.info

ベル・エポックの当時は歴史上の有名な偉人が多く、リストアップしてみました。 当時の著名人(一例) 画家 エドガー・ドガ 画家 トゥールーズ=ロートレック 画家 アルフォンス・ミュシャ 画家 アメデオ・モディリアーニ 画家 ベルト・モリゾ 画家 アンリ・マティス 画家 アンリ・ルソー 画家 ピエール=オーギュスト・ルノワール 画家・彫刻家 パブロ・ピカソ 物理学者 マリ・キュリー 生化学者 ルイ・パスツール 作家 マルセル・プルースト 女優 サラ・ベルナール(ミュシャの運命を変えた出会い 女優サラ・ベルナール - バレエヨガインストラクター三科絵理のブログ) 作曲家 エリック・サティ 作曲家 イーゴリ・ストラヴィンスキー 作曲家 クロード・ドビュッシー 作家 スコット・フィッツジェラルド 作家 アーネスト・ヘミングウェイ 詩人 モーリス・メーテルリンク(青い鳥の作者) 劇作家 オスカー・ワイルド 発明家 アルベルト・サントス=デュモン ファッションデザイナー ポール・ポワレ(女性のドレスのコルセットを解放) バレエ・リュスプロデューサー セルジュ・ディアギレフ バレエダンサー ヴァツラフ・ニジンスキー バレエダンサー イサドラ・ダンカン(モダンダンスの祖) ほか こんなにも、全員わからなくとも名前だけでも聞いたことのあるような人物ばかり。文化の中心であったことがよく分かります。 また、第一次世界大戦と第二次世界大戦のはざまの時期で、激動の変化を遂げつつある時期でもありました。

ガブリエル・シャネルがデザインしたバレエ作品とその背景 - バレエヨガインストラクター三科絵理のブログ

いまわたしたちが「パリ」と聞いて、特に日本人としてイメージする文化的なイメージは、ベル・エポックの時代が大いに影響しています。

こういう時代だからこそ、バレエも先進的な社会影響をもっていたのでしょうね。

blog.coruri.info


www.youtube.com

映画中のパリの街並みも素敵。写真をもとにリアルな描写になっていて、4年ほどかけて人物のいない風景を撮り続けて溜めていたそうです。

逆に人物はアニメーションなので、その2つが合うのか?と思うのですが、見ているうちにこの世界観に感情移入するようになります。

この独特のテイストはフランスのミッシェル・オスロ監督のこだわりで、彼の哲学はさまざまな人種のキャラクターを登場させるヒューマニストでもあります。

主人公の女の子ディリリは1900年のパリ万博にて「植民地時代の支配がまだ残るフランス社会で原始的な暮らしの見せ物をしている」という衝撃的なシーンから始まります。こんなにベル・エポック、アール・ヌーヴォー、エコール・ド・パリと浮かれてしまいそうな世相の影に、忘れてはならない歴史的背景も見逃すことがありません。

短くてあまりにショックな冒頭から始めるのですが、ディリリは高度な教育を受けている立派なマドモワゼルで、庶民の大人は太刀打ちできないほどのエレガンスを実は備えています。たった一人フランスにやってきた混血の人種のディリリはさびしそうにも見えるのですが、豊かな交友関係で家族的な仲間をどんどん増やしていきます。ほっとして先を楽しんでくださいね。

ガブリエル・ヤレドの音楽も軽快でパリの風を届けてくれます。

Amazon などでぜひご覧ください!

child-film.com

ディリリとパリの時間旅行 (字幕版)

ディリリとパリの時間旅行 (吹替版)

ディリリとパリの時間旅行 [Blu-ray]

あらすじ(公式HPより) ベル・エポックの時代のパリ。 ディリリは、どうしても外国に行ってみたくて、ニューカレドニアから密かに船に乗りパリにやってきた。 開催中の博覧会に出演し、偶然出会った配達人のオレルとパリで初めてのバカンスを楽しむ約束をする。その頃、街の人々の話題は少女の誘拐事件で持ちきりだった。男性支配団と名乗る謎の集団が犯人だという。ディリリはオレルが紹介してくれる、パリの有名人たちに出会い、男性支配団について次々に質問していく。 洗濯船でピカソに“悪魔の風車”に男性支配団のアジトがあると聞き、二人は向かうが、そこでオレルは狂犬病の犬に噛まれてしまう。三輪車に乗ってモンマルトルの丘から猛スピードで坂を下り、パスツール研究所で治療を受け、事なきを得る。オペラ座では稀代のオペラ歌手エマ・カルヴェに紹介され、彼女の失礼な運転手ルブフに出会う。 ある日、男性支配団がロワイヤル通りの宝石店を襲う計画を知った二人は、待ち伏せし強盗を阻止する。その顛末は新聞に顔写真入りで大きく報じられ、一躍有名になったディリリは男性支配団の標的となり、ルブフの裏切りによって誘拐されてしまう。ディリリはオレルたち仲間の力を借りて男性支配団から逃げることができるのか? 誘拐された少女たちの運命は?