英国の名高いバレエ団である、サドラーズウェルズ・ロイヤルバレエ団、英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパルを務め続けた日本人プリマバレリーナ。吉田都さんの新しい本を読みました。
『バレリーナ 踊り続ける理由』
輝かしいキャリアはもちろんのこと、日本人女性らしい、しなやかなお人柄も尊敬する方です。
バレエ団を引退された今は、フリーで国内外の舞台出演や指導の活動をされています。
私自身、ずっと憧れのダンサーでしたので、くるみ割り人形やライモンダなどの公演を観たり、これまでのご本も読んできました。講演会を聞きに行ったこともあり、舞台で拝見するのとはまた違う柔らかく気品ある空気感が忘れられません。
新しい1冊では、50歳を迎えられた吉田都さんの活躍の裏側や親しみを感じるエピソードがたくさん詰まっていると感じました。
文章も優しくて気品のある感じで、すっと入ってきます。
エレガンスは、冷たくない
という一節もありましたが、印象に残りますね。
英国のエレガンスを心身とも体現されてきた方だけに、この1冊全体からも温もりを感じました。
日本人として、世界で有数のバレエ団で活躍し続けるのは、並大抵のことではない世界。
特にロイヤル・バレエ団は、世界中から才能あるダンサーが集まってきます。
英国皇室が守り続けた芸術性の高さに匹敵する、精鋭のダンサーばかり。
中でも厳しい階級構成になっていて、競争も厳しい…そんな中で、吉田都さんはトップの座を1995年〜2010年まで活躍されていました。実際に、ストレスで心身を壊すケースもあるそうです。
吉田さんの在籍していた頃は、100年に一度のダンサーと称されるシルヴィ・ギエムなどもいて、もともと手脚の長い外国人ダンサーに比べて、体型も顔立ちもコンプレックスを感じて若い頃は特に悩んだそうです。
さらには、主役であるがゆえ、批評やチケットの売れ行きの責任までかかってきます。
そんな生活をどんな風にして乗り越えていたのか。どんな転機があって、向き合っていくようになったのか。周りにはどんな仲間が支えてくれたのか。
そんなエピソードが詰まっていて、同僚のダンサー(ケヴィン・オヘア、ジョナサン・コープ、ダーシー・バッセル、フェデリコ・ボネッリなど)がさらっとエピソードに登場してきますし、ダンサー以外の組織構造についても書かれていて、面白かったです。
数年前ウクライナのバレエ団来日公演に客演されたときも観に行ったのですが、その指導者の先生から厳しく励まされたエピソードも織り込まれていました。あの演目にはそんな裏側があったのだ…と思い出します。
バレエ団のダンサーというのは、ある意味、ふつうの企業と同じように「職業人」でもあります。
しかも、日本のバレエ団と英国ロイヤル・バレエ団のような組織では、バックアップ体制も観客の国民性も違いますし、職業の待遇面も違うことなども書かれています。
大人バレリーナのみなさんも、またはバレエを踊ったことがなくても、「こういうところは会社員と似ているな」と共感する話もあるのではないでしょうか。
バレエに限らず
必要なことはたくさんあるけれど
毎日コツコツ続けることが何より大切です。
「千日の稽古を鍛とし 万日の稽古を錬とす」
どちらに進めば良いのか
わからないなりに
もがき苦しみ
続けていると
ふと違う景色が
見えてくることがあります。継続は力なりを
今も実感する毎日です。
本の巻末に直筆で書かれたこちらのメッセージ。本当に素敵だなと思います。
心から応援しつづけながら、また美しい姿を観に行きたいです。
気になる方はぜひ手にとってみてはいかがでしょうか。
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