美の本質は、シンプルであること
バレエの美の本質は、シンプルであること、"無駄をそぎ落とすこと" にあります。
"同じ作品なのに、美しいのは何が違うんだろう?" と思ったことはありませんか。
"シンプルさはすべてのエレガンスの鍵。" (ココ・シャネル)
ファッションとも同じように、シンプルであることはバレエらしい美しさを洗練させる手がかりになります。
引き算で考える
美しさは、華美に飾りを足そうとして備わるものではありません。
いかに無駄な動きをしないか。
つまり、引き算で考えることが、美を洗練させていくポイントです。
本質的な美は ”シンプルさ” に宿る
無駄をそぎ落としてこそ、本質が残る。
こうした考え方は、一般社会の「本質的な価値を見直そうとする動き」にも通じるものを感じています。
現代社会は、大量生産消費をベースとして、所有を増やすことが幸福と捉えてきました。だから、”足し算”で考えることが当然の世の中です。
でも最近では、所有を減らして、引き算で本質的な価値を見直すことを生活で実践する人が増えてきています。
例えば、断捨離やミニマリスト(物をできるだけ持たない暮らし)と言われるようなライフスタイルであったり。
Apple創業者のスティーブ・ジョブズも、シンプルであることこそ美であるという世界観を持っていたと言われています。
そういったライフスタイルを実践する方々が、よくおっしゃること。
シンプルであることは、複雑であることよりも難しい。
それはバレリーナたちにとっても同じことで、シンプルな動きこそ奥深いことを、彼女たちはよく知っています。
無駄をそぎ落とすと、気品が浮かびあがる
無駄な動きは、美の調和を作る上で目障りとなります。
特にグループで踊るときは、無駄な動きが目立ちやすくなり、踊りが揃わないと、調和が生まれません。
そうしたノイズを無くしていけば、本当のバレエらしい美しさが残ります。
例えば、綺麗に見せようとするあまり、必要以上に手や指先を飾り立てると、かえって雑に見えることがあります。
気品を感じさせるには、シンプルで無駄な動きをなくすと、緊張感のある空気を醸し出し、見る者の目を惹きつけます。
無駄のない動きは、テクニックの面でも上達を促します。
無意識でやってしまう癖に、一つずつ向き合う
無駄な動きとは、つまり無意識な癖です。
自分としては、無意識にやっているのだから、わざとやっているわけではありません。
だから、癖を一つ一つ直していくのは骨の折れることでもあります。
でも、決してできないわけではなく、意識することで変わっていきます。
一見、バレリーナの動きは、ダイナミックで華やかに飾り立てて装飾を増やそう・増やそう、としているように思えるかもしれません。
しなしながら、動きの美しさは引き算で洗練されていきます。
無駄をそぎ落とすことで本質的な美しさが宿ります。
シンプルであることは奥が深い。
そのことを身をもって体験しながら、バレリーナたちは生きた彫刻のように洗練されていくのです。