体で感じて、体で記憶して、体で思い出す
ダンサーとしてのバックグラウンドが大きく影響しているのですが、
《体で覚える記憶》を私は大事にしています。
記憶とは頭で覚えるだけでなく体でも覚えるもの、というくらいに思っているほどです(笑)。
単にポーズの取り方や、バレエの踊り方といった動作の仕方だけでなく、
心穏やかな気持ち・しあわせな心の状態をも体で沁み込ませるくらいに感じています。
だから、体や心の疲れを感じたときは、
”心穏やかで神経が研ぐ済まされた感覚”を呼び起こして、 それを手がかりに軽やかでニュートラルな状態を取り戻します。
そして、その感覚が錆びつき無く保てるように、 自分自身のバレエやヨガのレッスンを実践しています。
ちょっと抽象的なので、例をあげると、 ヨガレッスンが終わった時を想像してみてください。
きっと心地よい感覚を体験したことがあると思います。
たいてい、レッスン前と終わったとき、 同じ姿勢をしていただきますが、終わった後の方が明らかに芯が通っていて、余分な力は抜けています。
顔の表情もゆるみ、ほっとしたやさしい笑顔を見ます。
「この穏やかな感覚を、体に沁み込ませてください」ということを皆さんへお話ししています。
ふつう体の感覚とは、一瞬で過ぎ去っていくので、いちいち記憶していないですよね。
一方で、ヨガの《あの心地よさ》が日常生活でも維持できたら、穏やかでちょっとのことでは動じないような自分でいられそうな気がしませんか。
心の雑音が消え、集中力が高くて、油断もすきもなく、余分な緊張なく、ニュートラル。
仕事でも、趣味でも、演技でも、スポーツでも、実力をしっかりと発揮できるような自分であるのではないでしょうか。
たとえ、ヨガレッスンをした後でなくても、頭が疲れてぼーっとするときや、体がだるくて重いときに、 体の感覚を呼び起こそうとすると、
あの心地よい体の記憶を思い出し、 結果的に姿勢が整ったり、呼吸を深めたり、体幹を引き上げようとして、軽やかな身のこなしが戻ってきます。
体の感覚・体の記憶は、穏やかな自分を取り戻す手がかりになります。
呼吸の深さはどうか。 背筋の伸びやかさはどうか。 ウエスト周りや腰のあたりはどんな風に引きあがっているか。 脚はどんな風につけねから長く伸びているか。 顔の表情はどんな風にすっきりしているか。 のどはどんな風にゆるんでいるか。
細かく体の記憶を刻んでおくことで、見失ったときに呼び起こすのです。
(実際の私は、もっと細かいレベルで体の記憶を刻んでいます。ダンサーの身体感覚は、ふつうからすると驚くほど細かいものです。)
いつも置いてけぼりになってしまっている”体の感覚”を呼び起こすこと。
ストレスや疲労で忙殺されたり、自分を見失ってしまうそうなときや、 「本来の自分を取り戻したい」ようなときに、 《穏やかな自分》をつくる大きな手がかりになることと思います。