今もまた新しい作品に取り組んでいます。
控えている新作がいくつかありますが、今週仕上げをしているのが、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第8番悲愴の第二楽章です。
5分くらいある長さの音楽で、今までのレパートリーの中ではソロとして1番長いです。
削るか残すか迷いましたが、ベートーヴェンの魂が伝わってくる気がして原曲のまま生かすことにしました。
いろいろなピアニストさんのYouTubeなどを見たり、プレイリストには辻井伸行さんや反田恭平さんの演奏も入れて、これまでに100回以上?一日中聴いていた日も多々ありました。有名ですし、のだめカンタービレでも物語の大事な音楽になっていたり、世界中で愛されていますね。
この音楽を選んだのは、前に辻井伸行さんのピアノコンサートでアンコールに演奏された悲愴のこちらの曲で感涙したからです。
辻井さんの演奏が好きなことと、コンサートの興奮と、なにかその時の自分に響くものがあったのか、ふるふると涙が自然に流れていました。
「世界にこんなに美しい曲があったのか」と思いました。
初めて聴いたわけではなかったのに、不思議なものです。
いつかはこの曲をバレエにしようと思っていました。
そのときの日記
「辻井伸行×三浦文彰 ARKシンフォニエッタ」感動の涙。 - バレエヨガインストラクター三科絵理のブログ
ようやく私なりの言葉で作品になりました。またそのうち公開できたらと思っています。
しばらく悲愴を考えていたので、出かけたりカフェに行く時などは楽譜をプリントして小さく折り畳みカバンに入れていました。イメージのメモ書きを書き込んでいます。
楽譜はタイムラインを整理するだけでなく、創作過程で音楽をどう聴いていたかのログにもなります。私は演奏することはできないのですが、どんな音符で構成されていて、振付のアクセントや心情をどこに感じているかを楽譜で確認できるのです。
悲愴は聞き込めば聞くほど、聞こえ方が変わっていった不思議な体験がありました。演奏しないからこそ「どの音を聞いているのか?」客観的に気づくことで、私は音楽のここを着目しているんだなと把握できるのです。YouTubeの解説動画をあげておられる方々からもヒントをいただきました。
そういう体験ができる音楽は貴重ではないかと思います。
本ならば読めば読むほど発見がある名著だとか、噛めば噛むほど味わいが深まるとか、バレエでも奥が深いほど踊る醍醐味が増してくるような、そんな名作なのだと実感しました。
それに気づくと、ピアニストさんごとの導かれ方が興味深くなり、どんどん悲愴にハマっていきました。辻井さんと反田さんにしても色の出方に違いを感じます。
やさしくて、宇宙のゆりかごのような、母なる大地を感じるような、ホッとする気持ち。
こんなにこのメロディーに取り憑かれることになるとは、創作に着手するまで思いませんでした。
きっかけを得た辻井さんのコンサートでの感涙は、狙ってもできないようなかけがえのない経験であったなぁと感謝しています。