体づくりには、終わりがない。
たとえトップアスリートでも、プリマバレリーナでも、完璧に永遠に完成された体はない。
これはいつも感じていることです。
目に見える評価と、目に見えない大切なもの
どうしても「体づくり」というと、ダイエットで何キロ痩せたとか、洋服のサイズがダウンできたとか、目に見える評価でゴールを作ることが主流になってきています。
目標を掲げて、努力したり達成することは素晴らしいことですし、充実感を味わうことができます。
ただ、手っ取り早く・効率よくゴールに達成することを重要視されやすく、その結果、長い視点でプロセスを見つめることが忘れられやすいように感じることがあります。
ダイエットのリバウンドは、その弊害を象徴する問題かのように思われます。
体は生き物であり、自然の摂理にはあらがえない
体づくりのプロであるバレリーナの方々と子供のころから過ごしてきた私にとっては、「本当の体づくりには、終わりがない」ということを常々考えさせられてきました。
本当は、どんなに鍛え上げられた体でも、完成したからもうあとはおしまい、ということはありえないのです。
なぜなら、人間の体は生き物だから。
生まれてから、やがて寿命が尽きる瞬間まで、常に体は変化し続けていくものです。
素晴らしいバレリーナたちは、その変化を受け入れつつもより良い状態を維持するために、小さなプロセスを無数に積み重ねています。
ミクロな目で、いまの自分自身をまっすぐ見つめる
鍛え上げられた体をもつ人は、身体意識が極めて高く、高精細レンズを通すようにミクロな変化を見つめています。
はたからみると、目に見える違いがないように見えても、本人の意識の中では、毎日体の状態は違っているのです。
たとえば疲れ・練習量・内臓の調子・食事・筋肉の張り度合い・体の軸・重心のかかり方・メンタルの状態・生理周期のバイオリズム・季節や気候の影響などに至るまで、あらゆる要素が複雑に絡み合っています。
また、自然の摂理でだれもが老いを経ていきます。それは、アスリートやバレリーナも同じです。
まったく歳を感じさせないように見えるバレリーナでも、実はかげで筋肉の衰えと向き合い努力されている姿を見てきました。
下りのエスカレーターを登るようなもの。
このように表現するバレリーナもいるほど、敏感に感じ取っています。
だからこそ、そういったアスリートたちは、今の自分の体の状態を、誰よりも客観的に見つめています。
私の場合も、一般的にみると柔軟性は高い方ですが「毎日体の状態はちがいます」と言うと驚かれることも多いです。
日々の体の変化を細かく感じているからです。
もちろんまだ成長させたいと思う点もたくさんあります。
時には、10代のころと比べて衰えた面を感じたり、向き合いたくない変化に気づくこともあります。
それでも、どんなことであれ、気付いた《いま》の自分の状態にまっすぐ向き合うこと。
ありのままを見つめて、受け入れること。
これはヨガの精神にも通じるとても大事なことですが、
これこそなによりはじめの一歩です。
そして、そこから「どんなアクションを起こすのか?」は自分で答えを見つけ出すことです。
誰かに与えられるものではありません。
自然の摂理に寄り添うことが、自然体の美しさ
ここまで酷なことのように見えるかもしれませんが、個人的な想いとしては、ここを乗り越えることで、自然の摂理に戦うというより《自然の摂理に寄り添う》ことができるのではないか、という気がするのです。
自然の摂理とまっすぐに向き合いながらも、理想とする方向へ寄り添うことで、より自然体で活き活きとした自分で生きられるのではないか。
なぜなら尊敬する師もそんな姿で美しく生を全うしていたからです。
情熱や美しさを愛する心は、ときに無意識下に眠っているポテンシャルを引き出してくれます。
だから私も、与えられたいのちを使って、その問いを確かめていきたいと思っています。
本当の体づくりは、数字や形だけではなく、目に見えない大切なことがたくさんある。
そんな美しい想いをもって自分に立ち向かう人を、全力でサポートするべく日々修行しています。