バレエヨガインストラクター三科絵理のブログ

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フェリ、ボッレ&フレンズ Aプロ公演

鑑賞記録の順序が入れ替わってしまうのですが、昨日《フェリ、ボッレ&フレンズ ーレジェンドたちの奇跡の夏》初日公演を観ました。

世界中のプリマバレリーナとして活躍したアレッサンドラ・フェリが引退していましたが、6年後50歳で舞台に復活。2018年の世界バレエフェスティバルでもマルセロ・ゴメスと素晴らしい名演を見せていました。今年の夏は、フェリと同じくイタリア出身のロベルト・ボッレとコンビを組み、マルセロ・ゴメス、メリッサ・ハミルトン(英国ロイヤル)、アレクサンドル・リアブコ、シルヴィア・アッツォーニ(ともにハンブルグバレエ)、日本からは上野水香さんというキャスティングで親しいスター仲間達とのガラ公演が開催されたのです(Bプログラムは若干キャスト変更)。週末まで行われています。

フェリと言えば、美しいポアントと足さばき。そしてジゼルやマノンなどのドラマティックバレエで女優と称されていた記事を子供のころからダンスマガジンで読んでいました。その姿は健在!引退していたとは思わせない軽やかさです。

Aプログラムでは、フェリは第三部のフレデリック・アシュトン版「マルグリットとアルマン」(椿姫の物語)をボッレと踊っていました。プログラムによればこの二人でこの作品を踊るのは夢が叶うと書かれていました。本作初共演のために、抜粋ではなく全編を実現するため、マルセロ・ゴメスがアルマンの父役、アレクサンドル・リアブコが公爵役を務めるという贅沢なキャスト(どちらもアルマン主演に相応しいお二方)でした。日本人男性ダンサー方も囲んでいました。紅一点のフェリ。

フェリの姿はとても可憐で、恋に落ちた女を滑らかに舞い踊り、踊る喜びが伝わってくるよう。そんなフェリを囲むダンサーたちみなも温かく見守っているような椿姫の場面でした。

そんなガラ公演の見応えは第一部、二部だけとったとしても素晴らしいものと感じました。

第一部

カラヴァッジオ ハミルトン&ボッレ

Falling for the art of flying アッツォーニ&リアブコ

ボレロ 上野水香&ゴメス

第二部

アミ ゴメス&リアブコ

クオリア ハミルトン&ボッレ

アルルの女 アッツォーニ&リアブコ

第三部

マルグリットとアルマン フェリ&ボッレ&ゴメス&リアブコ

ハンブルクバレエの大物ペアであるシルヴィア・アッツォーニとアレクサンドル・リアブコの息はバッチリと合い、Falling for the art of flying では愉快で滑稽にも見えるような動きを楽しく織り交ぜながら愛らしい踊りを、そしてアルルの女ではインパクト強大なドラマを演じ切っていました。ハンブルクバレエがダンサブルかつドラマティックなカンパニーだからこそ、安定感ある技巧と演技力の高さに客席は息を呑みました… 特にアルルの女での一目惚れして狂気的に踊るリアブコの演技はブラボーのかかり度合いが際立っていました!!体温が熱くなる感覚、まるで全幕で見たのかなと錯覚してしまいそうな興奮でした。

リアブコは出番が多く、マルグリットとアルマンの公爵だけでなく、マルセロ・ゴメス振付作品でも彼とデュエットを踊っていました。前の来日公演でも感じていたのですが、共演する相手方の個性に合わせて溶け込み調和してしまいそうな、とてもやさしくて器用で従順な方なのだなあと思わされます。ゴメスも昔の輝きはそのままで、より一層表現の幅を広げ軽快な作品を披露していました。男性二人ですが兄弟愛のような遊び心あり張り合うようでほほえましい光景でした。

メリッサ・ハミルトンとロベルト・ボッレは、カラヴァッジオとクオリアを踊りました。カラヴァッジオは、画家のイメージから着想された神々しい作品で愛を表現する場面。複雑かつ極めて高い柔軟性を求められるパドドゥをさらりとこなしていました。神々しさの中にもハミルトンらしい可愛らしさを感じました。

一方でクオリアも複雑なパドドゥであり、衣装はキャミソールにショートパンツというシンプルな出で立ちでありながら、踊りは抽象の中に官能的な香りが漂いました。ボッレとハミルトンも息がぴったり。

そして上野水香さんとマルセロ・ゴメスが踊った、ローラン・プティ振付のボレロもグイグイと感性を舞台の二人にぐんと持っていかれる作品でした。水香さんと言えば貴重な日本人のボレロを踊れる女性ダンサー。そして唯一無二の存在感を放つ円熟されたマルセロ・ゴメスのパートナーリングが素晴らしく相まって予想以上に見事に調和していました。焦らしながら唇がふれそうになりながらだんだん燃えていく二人。冒頭から目の輝きが突き抜けている男女。はじめは別々の動きをしていたのが、やがて動きが一緒に同期していき、ラストに向けて汗を光らせながら一体となっていく。その男女のパワーバランスが、女性優位でも男性優位でもなく均衡してある一定の緊張感があり、張り詰めた中での近づいていく二人という構図にドキドキしました。燃えながら溶け合っていく様は情熱的であり生命力に満ち溢れていました。

鑑賞したばかりでまだ余韻さめやらぬまま…。

Bプログラムもきっと素晴らしいことでしょう!充実した公演をありがとうございました!!