ドン・キホーテは、原作ミゲル・セルバンテスの「ドン・キホーテ」長編小説からバレエ化された作品です。
スペイン風の踊りとクラシックバレエがコミカルな物語で繰り広げられ、子供から大人まで楽しめる人気のバレエ作品です。
ドン・キホーテ 登場人物
キトリ バルセロナの宿屋の娘
バジル キトリの恋人 床屋の青年
ロレンツォ キトリの父 宿屋の主人
ガマーシュ 貴族 キトリと結婚しようとしている
ドン・キホーテ 空想で騎士になりきっている男
サンチョ・パンサ ドン・キホーテの従者
ドルシネア ドン・キホーテが騎士の旅で出会うと思い込んでいる憧れの姫(貴婦人) →キトリがドルシネアだと思い込むため、同一人物が出演することが多い
森の女王、キューピッド ドン・キホーテの空想の世界のキャラクター ドリアードは森の妖精という意味。
あらすじ
※細かい設定は演出によって異なることがあります。
プロローグ。ドン・キホーテの家。騎士道物語が好きで憧れているドン・キホーテは、騎士になりきったつもりで現実と空想の世界が分からなくなっている。
ドルシネア姫(貴婦人の場合もある)という憧れの女性を見つけようと決心する。
サンチョ・パンサを旅の従者にして、鎧と兜を身につけ、遍歴の冒険に出る。
第一幕。スペインのバルセロナの賑やかな町。宿屋の娘のキトリは、恋人のバジルや友人たちと楽しく踊っている。
キトリとバジルは結婚したいと思っていたが、バジルは床屋で貧しい青年だからとキトリの父が反対し、代わりに貴族のお金持ちであるガマーシュという男を婚約者に連れてくる。キトリは嫌だと逃げ回る。
闘牛士のエスパーダと町の踊り子がやってきて賑わう。
そこへドン・キホーテとサンチョ・パンサが遭遇し、ドン・キホーテはキトリが心のドルシネア姫だと勘違いする。
騎士としておごそかにドルシネア姫に踊りを申し込み、キトリとメヌエットを踊り始め、父や婚約者は訳の分からない展開に怒る。
群衆は変わり者のドン・キホーテに興味津々で集まってくる。
気づけば全体でドタバタになり、キトリとバジルは町から逃亡していく。
第二幕。キトリとバジルが父から逃げている間、ドン・キホーテとサンチョ・パンサが追いかけていく。
ドン・キホーテとサンチョ・パンサはジプシー(ロマ)たちの住む野営地に遭遇する。
そこで人形劇を見てほしいと披露され、その物語にのめり込んだドン・キホーテは、なぜか悪者を倒さねばと劇や風車に剣を振りかざす。(※人形劇がない版もある)
周囲は慌てるも、やがてドン・キホーテは気絶してしまった。
ドン・キホーテは夢の中でドルシネア姫と森の妖精たちを見る。天使(アムール)や森の女王も出てくる。美しい幻想の夢から目を覚まし、キトリをまた追いかけていく。
場面は酒場。逃げ回っていたキトリはようやく父に捕まってしまい、無理矢理ガマーシュとの婚約を承諾させられる羽目になる。
そこでバジルがひらめき、キトリと自分が結婚できないのなら命を断とうと剣を胸に突き立てる。バタッと倒れて見せかける。
キトリの父もガマーシュも群衆も、みな驚いてひるむ。
キトリはバジルが機転をきかせたことに気づき、これではかわいそうだからせめてバジルが死ぬまでの間は許してほしいと父にせがむ。
父はしぶしぶ仕方ないと許すと、バジルの狂言自殺だったと跳び起きる。
父は拍子抜けするも、ドン・キホーテの仲立ちもあり、ついにはバジルとの結婚を認めることになった。
(この場面は第三幕になることもある)
第三幕。キトリとバジルの結婚式が繰り広げられる。祝福の踊りとともに主役の二人のグラン・パドドゥが披露される。ドン・キホーテとサンチョ・パンさは二人の結婚を祝い、また旅に出ていく。
ドン・キホーテは原作から人気!バレエやオペラや交響曲になった
スペインの陽気な空気とドン・キホーテの予想もできない突飛な出来事が繰り広げられる旅は、セルバンテスの原作から人気を博してバレエの定番の作品ができる以外にも、マスネのオペラや、リヒャルト・シュトラウスの交響曲も作られています。
第1幕 バジルとキトリ
第1幕 エスパーダと街の踊り子
マスネ作曲 オペラ ドン・キショット
リヒャルト・シュトラウス作曲 交響曲 ドン・キホーテ
スペインの作家ミゲル・セルバンテスは原作の長編を1605年に前編、1615年に後編を書きました。
現在のクラシックバレエで人気になっている「ドン・キホーテ」は1869年マリウス・プティパの版を初演したことをきっかけに、ミンクスの踊りやすい音楽と愉快な演出が人気を博して、その後1900年アレクサンドル・ゴルスキー版として改訂されたものが現在世界中で踊られているドン・キホーテの土台になっています。
初演から踊りが差し替えられたり、ドン・キホーテの夢の場面を追加したりと、徐々にブラッシュアップされた歴史があります。
バレエの物語を知って、ドン・キホーテの鑑賞のヒントにしてみてくださいね。