フルーティスト上野星矢さんのリサイタル(with ピアニスト 佐野隆哉さん)をサントリーホールで鑑賞してきました。
プログラム
J.S.バッハ 無伴奏フルートのためのパルティータ BWV1013
ドビュッシー 牧神の午後への前奏曲
ヒンデミット フルートソナタ
ワーグナー 歌劇「ローエングリン」よりエルザの大聖堂への行列
R.シュトラウス ソナタ変ホ短調 作品18(原曲 ヴァイオリンソナタ)
アンコール オペラ「カルメン」アリア
フルートを学ばれている方々には著名な若手実力派でいらっしゃることを生徒さんからお話を聞き、ちょうどその時期にリサイタルの発表がなされていて。数ヶ月前から楽しみにしていました。
フルートは、踊り手として、とても曲線的で止まることなくゆらぎ続ける波のように感じる楽器。
思えば、くるみ割り人形のあし笛が特に印象的です。
オーケストラの中にいるとその一部なんだけれどフルートに着目できるコンサートはとても貴重でした。
バレエのなかでは「かわいらしい軽やかな音色」のイメージが強かったのですが、カルメン幻想曲などを聞くと超絶技巧で強い生命力がみなぎってくる感じ。
柔らかくも、強くも、振れ幅を自在に変えてしまう素晴らしい楽器なのですね。
特に牧神の午後は、バレエ公演以上に、じっくりとフルートの醍醐味を堪能できました。絶妙な印象が残る開始音。そこから空気がふわふわと立ち上っていくようなまろやかな音色。ピアノからその背景描写までが心に浮かんでくる。
ワーグナーの エルザの大聖堂への行進はこのなかで一番宇宙的に感じました。
シュトラウスのソナタはさらに叙情的な華やかな天国のようでした。
アンコールは誰もが湧くカルメン!最後まで長く楽しませてくださりうれしかった!
音楽を聞くと、どんな場面のどんなバレエが似合うかなあと、いつも妄想を広げます。
フルートは歌声であり、魂の叫びであり、心のゆらぎであり、音楽のメッセージなんだなぁと新鮮に感じられました。
そして、一緒に演奏された佐野氏のピアノも格別で、音色が空気ににじんで溶けていくようでした。わぁっと、ため息がでました… 素晴らしい経歴が素人目にも伝わってきます。
フルートとピアノ。単独でも2つの音色がこんなにも相性いいものだったんだと驚くほど、それだけで宇宙的でした。
音楽の奏でる世界に集中したくて、目を閉じて聞き入ると広がる色や世界、自然の星空や花や鳥のさえずりまで見えてきて。
でも目をあけると、ああこの広い宇宙はこのお二人のここから生まれていたんだって、不思議な気持ちになりました。
これぞ、音楽の魔法なのですね…!
踊りの振りをつけたくなるような、映画を丸ごと見たような、肌の細胞すみずみが深呼吸するようでした。
音楽鑑賞は、創作のヒントにもなっています。
フルートの曲もいろいろ踊りたいな♪
今回のリサイタルは学生さんたちの支援のために無料招待をつけていたそうです。だから中高生の楽器を持っている方々がたくさんいました。未来の演奏家や音楽愛好家がまたここから生まれていくのでしょう。ステキなプロジェクト。
また聴きに行きたいです。