バレエヨガインストラクター三科絵理のブログ

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【鑑賞メモ】英国ロイヤルバレエ・シネマ・シーズン2016/2017「くるみ割り人形」(2016年12月収録)

2017年2月10日〜2月16日まで限定で上演の、英国ロイヤルバレエ・シネマ「くるみ割り人形」を観てきました!

2016年12月に収録されたもので、今回新しく改定された演目(中国の踊り)もあり、今のロイヤルバレエを観たくて行ってきました。

英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2016/2017
「くるみ割り人形」
2016年12月8日収録
【振付】ピーター・ライト、レフ・イワノフ
【音楽】チャイコフスキー
【指揮】ポリス・クルージン
金平糖の精: ローレン・カスバートソン
王子: フェデリコ・ボネッリ
クララ: フランチェスカ・ヘイワード
くるみ割り人形(ハンス・ペーター): アレクサンダー・キャンベル
ドロッセルマイヤー: ギャリー・エイヴィス

タイムスケジュール
オープニング・インタビュー・第1幕 約71分
休憩 約12分
インタビュー・第2幕 約76分
(計2時間39分)
(公式サイトより)http://tohotowa.co.jp/roh/news/2017/02/09/thenutcracker/

伝統を守り現代に生き続ける

ロイヤルバレエのくるみ割り人形は、古い年度の映像も含めて、何回も見たことがあります。それでも、「飽きない」どころか、あらためて感動しました…。

細かい振付、演技、演出も少しずつ手直しされているので、バレエ団という組織全体がみんなで伝統に新たな深みを出そうとしている努力も伝わってきます。

小さい頃に親がロイヤルバレエの映像を入手してくれたものを1番たくさん観たのですが、キャストが現在でははっきり確認できないのですが、たぶんレスリー・コリアさんとアンソニー・ダウエル氏が主演だったもののはず。。

おそらく30年くらい前の映像(1985年?)でしたが、小さな頃に何度も何度も観た舞台が、今も変わらぬ物語で同じ衣装、舞台美術で、大人になった今も改めて感動を与えてくれる芸術作品というのは、本当に特別なものです…。

クララも、ドロッセルマイヤーも、シュタールバウム夫妻も、コロンビーヌ人形も、みんな演じる人は変わっていますが、役柄はそのまま。

変わらず残せているということは、人から人へ作品が受け継がれているということでもあり、衣装や美術の作家さんたちの技術も受け継がれているということであり、それだけで胸がいっぱいになってします。

今回の主役のクララは、フランチェスカ・ヘイワードさん。くるみ割り人形役(ハンス・ペーター)は、アレクサンダー・キャンベルさん。ドロッセルマイヤーは、ギャリー・エイヴィスさん。主に第1幕はこの3役が物語を進めていくものですが、それぞれぴったりな配役でした。

クララは初め、おとなしめな少女…といった雰囲気でしたが、ねずみとくるみ割り人形の戦いの場のあとのパドドゥは、生き生きと等身大の女の子らしい感じ。ロミオとジュリエットのバルコニーの場のような、伸びやかさを感じました。

金平糖の精(シュガー・プラム・フェアリー)は、ローレン・カスバートソンさん。王子は、フェデリコ・ボネッリさん。ローレンさんは初めて見ましたがまさにシュガープラムに似合うようなすらっとして幻想的な出で立ち。フェデリコ・ボネッリさんは前から好きな甘い雰囲気の王子で、今回もお似合いでした。

他にも、平野亮一さん、崔由姫さん、アクリ・ルカさんなど、アジア出身人のダンサーもいて素敵でした。多国籍なバレエ団なのも見どころですよね。

演出

ロイヤルの「くるみ割り人形」を老若男女に愛される作品へと育ててきた演出家は、ピーター・ライト卿という方です。

日本のバレエ団が「くるみ割り人形」を上演する際にも演出を手がけられ、世界中を駆け巡っていらっしゃる偉大な方です。現在は90歳でいらっしゃいます。

シネマ中インタビューに登場され、ダーシー・バッセルさんとの対談映像もありました。

バレエ団の現在の栄光には絶対に欠かせなかった人物だと思いますし、ロイヤルの作品が世界に影響を与える大きさたるや…計り知れない偉業です。

あの吉田都さんの才能を学校時代から見出していらした、というエピソードも有名です。

元気でいる秘密は忙しくしていることだよ、とユーモアを交えながら楽しそうに話されていました。そんな姿を見て、こちらもエネルギーが湧いてきます。

初めて振付を依頼されたのは、ジョン・クランコ氏に「ジゼル」を持ちかけられたときだそう。でも、「感情移入できないから振付なんかできないと思った」のだそうで、…すごく意外です!

それでもやるしかないからと続けてきたら「場面を作ることが楽しい」と思うようになった。そんなエピソードに親近感を抱きました。

新しい「中国の踊り」

今回の版では、新たに「中国の踊り」を改訂。男性2人だけのジャンプが多い明るくてパワフルな演目になっていました。なんというか…、双子のジャッキー・チェーンのような(笑)。ロシアの踊り(トレパック)も男性の見どころがありますが、民族舞踊風とはまた違うコミカルな印象で楽しかったです。

「花のワルツ」の音楽では、ローズフェアリーとして崔由姫さんが登場。もともと可愛らしい女性なので、ピンク色のローズの衣装に、なんだか眠れる森の美女のローズアダージオを見ているような気分に。エスコート役の男性が4人いたので、まさにそんな印象…。 くるみ割り人形の中で、いろんなヒロインが楽しめるのも、ピーター・ライト版の魅力ですよね。

こうした歴史ある伝統を守り続けるには、保守的に「変えないようにする」という考えが生まれてもおかしくないだろう、と勝手ながら客観的に思ってしまいます。たとえば「変えないほうがよかった」とか批判されることもあるかもしれないですよね。でも、果敢に改訂して、リニューアルさせた上でみんなに愛されるものを作り続けている。それが、本当に素晴らしいと改めて思いました。ピーター・ライト卿は、一つ作るたびに「次はどうする?」ってまた話すんだよと言っていました。

バレエではまだ画期的なデジタルプログラム

「デジタルプログラム」というオンライン上で完結する紙のないプログラムを提供するという試みも面白いです。シネマの中で流れたインタビュー映像や、ダンサーのリハーサル風景写真なども入っていて、日本円で300円くらい。世界中の人が見られるようになりますし、紙媒体ではのせられない映像コンテンツも楽しめるというのが良い点ですね。

つれづれな感想ですが、参考まで。

先週はボリショイ・バレエ in シネマ「眠れる森の美女」も鑑賞したので、できたら書き留めておこうと思います♪

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