「好きなことがあっていいね」
思えば、昔からそんな風に友達が言ってくれることが、よくありました。
今でも飽きずに打ち込めています。
きっと一生かけても情熱が尽きないだろう、と思えるほど、好きなことがあるのは、ありがたいことなんだと大人になって再認識しています。
一方で、好きなことが見つからなくて悩む人もいるでしょうし、長続きしない、という人もいることでしょう。
私が子供の頃は、バレエを辞めたいと思ったことはありませんでした。
でも、幼稚園〜中学のあいだだけでも4回転居をしなければならず、毎回突然に引越しをしました。そのたびに、バレエ教室を新しく探さなければなりませんでした。
母は「どうする?またバレエ続ける?」と、ただ聞いてくれました。強制するわけでもなく、私の意思を尊重させてくれたのがありがたかったです。
私は迷いなく、続けると決めて、引越しするたびに母と教室を探していたのでした。どの教室にするのかは、私が決めさせてくれました。
転居や受験などでバレエを辞めざるをえないことも多いと思いますが、私にとってはありがたく続けることができ、自分の心にも迷いがありませんでした。
教室を離れるということは、先生とのお別れでもありました。
どちらの先生も大切にご指導してくださっていたので、寂しさはありましたが、「バレエを続けていれば、きっとまたどこかでご縁があるかもしれない…」そんな気持ちが小学生の頃から確信をもって備わっていました。
実際に、業界はつながりあっているので、いまだに過去のご縁に感謝することがよくあります。
大人になれば人間関係を大切に、というようなことを誰でも意識しますが、舞台芸術の世界では、子供のうちから自覚が求められる世界なのです。それが、私にとっては人生での教訓にもなっています。
子供のころの私がバレエに価値を見出していた大きな理由は、「バレリーナが観客に夢を与える」ということに尊敬していたからでした。
ただ好きだから踊る、だけではなく、踊るという行動で、見ている人が幸せになる… その循環がとても憧れでした。
夢を与えるには、ただきらびやかな姿を見せるだけではないんだ、ということも先生や先輩ダンサーの姿をみて理解しようとしていました。
華やかなステージだけに憧れたら、その先は続きません。
実際の舞台に立つまでの努力、日常からの積み重ねが最終的に求められる世界だからです。
見せかけの夢は、観ている人にバレてしまいます。
「舞台に立つと、生き様が見えてしまう。」
それはどんなバレエダンサーもよくわかっていることで、踊りの技術だけでなく、精神的な成熟を高めようとみな努力しています。
そんな、夢にひそむ現実をまるごと受け入れていたからこそ、すこし大変なことがあったりしても、乗り越えてこられたのかもしれません。
自分の祖母と同じくらいの年齢の先生が、「一生勉強しても足りないくらいよ」とおっしゃっていたのが、人生観の根底を作ってくださったのだと思います。
バレエを上手になりたいし、上手になる過程で、自分自身の内面が成長できるだろうということも信じていました。
子供ながらに、「バレエは人生の成長のものさしになる」と心から思えていたのです。
大人になり、大学や企業勤めもして回り道もしてきた自分ですが、子供のころからの信念は変わっていません。むしろ、「何歳になっても同じこと考えるんだな〜」とツッコミたくなるほどです(笑)。
今の自分は、子供の時には想像もできなかった生き方をしていますが、私の中ではすべてがつながっていて、未来の自分から見てもさらにつながりが変化していくのだろうと思います。
未来のことが見えなくても…
未来は、今のあなたに手を差し伸べています。
過去のあなたではなく、今のあなたに。
まだまだ道のり半ばではありますが、活動を通して、必要としてくださる方へ大きな夢を描くお手伝いができるよう、情熱こめてがんばっていきます。