2022年の春に満開の桜からひらめいて振付創作した《さくら》バレエ作品のレッスンを開催しました!昨年からのリピーターさんや、今年初めて踊ってみるという方々も一緒に、みんなで集中して有意義な時間になりました。
桜は日本人にとって特に春のよろこびを感じる木であり、季節の象徴でもあります。桜には「お花見」という風物詩があるほど、昔から日本で愛されている花だなと感じます。
もともとバレエにするにあたり、「桜のどんな面を切り出そうか?」と考えて、まとめました。
桜と日本文化の関係としては、武士道に見られる精神性も根底にあると思っています。
でも、踊りたいのはバレエであって、日本舞踊ではない。そして音楽もピアノ曲であるということ。(注:いつか日本舞踊らしさも別の作品で融合させてみたい気持ちはありますが、あくまで今の話はバレエである、ということです)
ここが、日本人である私の感覚で「桜」という日本的な美的感覚を西洋のバレエに落とし込むチャレンジだと思いました。
ベジャールがKABUKIをバレエにしているように、西洋と日本の文化はやはり根っこが違い、だからこそ何が生まれるのか?が面白いのです。
ただ、作品にするには、考えたことすべてを盛り込むことはできません。音楽も映画もスピーチもなんでも、やはりわかりやすい核がないと、なんでもありでわかりにくくなってしまいます。
決め手となったことは、私自身が桜を見て感動する気持ち、また1年の始まりに期待する気持ち、出会い直す気持ち、やはりこれに尽きると思いました。
何度でも見上げたくなり、携帯を持っていたら写真を撮ってしまいたくなる不思議。「いまこの瞬間を永遠におさめておきたい」夢中でシャッターを押してしまいます。
日の光が傾いていくと、木漏れ日の色も変わっていき、時間の変化もまた趣を感じます。
また開花の状況で徐々に満開になっていく楽しみと、散っていく瞬間の儚い美しさもまた素敵なものです。
桜の木の下でみんながワクワクするあの感じを、バレエを踊りながら喜びを分かち合いたいと思いました。
本物の散った花びらは元に戻っていくことはありません。やがて土に還るもの。
でもバレエにすれば、みんなが踊っている空気の中にもまた、桜が思い出せるじゃないかと…。
そんなふうにまで夢を広げてしまった私は、《さくら》にのめり込んでいきながら、いろいろなことを気付かされました。
2022年に桜の木の下で(普通に花見をしているふりをして)創作をしているとき通りすがりの人に「あ、きれいですよね」と話しかけられました。見知らぬ人に話しかけられるのは久しぶりでした。
いつのまにやらこの3年くらいソーシャル・ディスタンスで失ってしまった何かを、体で遊び踊るということは隙間をうめてくれるのだろうとも思います。
こちらは2023年、《さくら》を創作してから1年後の待ちに待った桜の花と。
SNSとYouTubeで紹介して、生徒さんたちにも《さくら》という作品の存在を知っていただけるようにしてきました。
そうして集まったみなさんには、作品の世界観というものがすでになんらか感じ取ってきていただいたような空気でした。
もちろん振付者の私の意図がすべてわかりきるまでではないと思いますが、それでも直感やピンときた感覚で「踊ってみたい」と思っていただけることに本当に嬉しく思います。
こうしたところが古典作品との違いであり、現代に生きる私たちが新しいアートを生み出していく価値なのだと思います。
細かいつなぎの動きや、ポーズのニュアンスは、テクニック中心のレッスンではなかなか実践できないことで、みなさんも「どうやったら桜に見えるかなぁ?」と研究するようなつもりで楽しんでくださいました。
流れていくような動きも、ふとした瞬間にアンドゥオールを使ったり、つま先をポアントにしたり、バレエの指先の角度を整えたり、などいつものバレエ基礎も役立ちます。
その上で、ポールドブラやアームスをもっと「花びらの美しい感じにしたい」「感情の変化を踊ってみたい」という欲が出てきます。
さらにリストの愛の夢という音楽が甘美でドラマチックな構成で、それが引き立つように振付をひねっています。
テクニックの繋ぎ方が理解できてくると、おそらく初見で踊ったときよりももっと音色や音符との一体感が生まれてきたり、同じ音楽でも聞こえ方が変わってくるということも出てくるかもしれません。
私自身も作品を作る時には、耳で覚えて速度や間合いも体で感じて歌えるくらいまで、100回かそれ以上繰り返し聞きます。
振付者もそれだけ聞いて踊っていくので、みなさんもこの作品を愛して自分の人生の一部にしてしまうくらいに、融合させてみていただくとさらに楽しめるのではないでしょうか。
衣装はレッスンのたびに少しずつ変えています。この日はソメイヨシノの白っぽさを出してみようと、ドット柄のERIN BALLET ART スカートを巻いてみました。
ERIN BALLET ARTとは、sylphynes さんの複数のブランド群の一つとして、私が行っているArt & Ballet プロジェクトからインスパイヤして制作してくださったバレエアイテムのブランドです。私自身がチャレンジ精神と表現を楽しむことを大切にしていることに賛同してくださり、オリジナルのバレエ振付作品に衣装制作もしてくださっています。
作品を作る・踊るということは私にとってなくてはならないことです。
みなさんとまたこのような特別な思いを分かち合えるレッスンも開催していきたいと思います。
このスカートはERIN BALLET ARTでドット柄のリクエストにシルフィーヌさんが応えてくださったミニ丈のもの🫧 《さくら》と合いまって、数年ぶりの再会もあったり、思い出たっぷりのレッスンでした🌸 pic.twitter.com/MXgTpr5iwy
— Ballet Yoga 🎀 ERI 三科絵理 (@mishina_eri) 2023年4月23日