ルーヴル美術館展《愛を描く》国立新美術館にて、先日観てきました。
こちらはポスターになっていた作品
フランソワ・ジェラール 《アモルとプシュケ》、または《アモルの最初のキスを受けるプシュケ》
の実物の絵画(撮影可能コーナー)でした。
予想外に大きな絵でひときわ特別なオーラを放っていました。
一枚だけ撮影してもよくわかりにくいと思いますが、壁と解説のボードから想像していただければと思います。
最初のキスを受け、頭の上には可愛らしく蝶が舞っています。
羽根はダイナミックな野生の鷹かのように猛々しい感じがします。
でも二人とも若い姿で、まだ中性的な柔らかさがあるというのも特徴。肌のきめ細かさまで伝わってきます。二人の目線の構図が絶妙ですよね。
細部まで美しく、大自然の場所というのも印象的でした。
青空の色がなんともやさしい雲に覆われて、真っ青というよりも、このファンタジー的な世界にとってはエメラルドも混じっていそうな空色です。
足元の野草の花々が香ってきそうです。
ずっと観ていたい一枚でした。
他にも、フランソワ・ブーシェ 《アモルの標的》 1758年、油彩/カンヴァス、268 x 167 cm も天使のイメージの新しい側面を見たような感じでした。
ハートの的に当たった矢と、もう当たったのでいらなくなった矢があるということに、ストーリーを想像させられました。
ロミオとジュリエット
ちょうど5月に新しいバレエ作品でロミオとジュリエットのレッスンをやるところに、タイムリーです。ロマン派の時代なのだと思いますので、描き方のタッチがサッサッとした筆の運びでそれがまた幻想的に見える気もします。(スケッチなのだそうです)
シャセリオーの名前はたしか葬送で読んでいたのですが、実際に絵を見たのは初めてかもしれません。
興味を持っていると、芋づる式に出会いを引き寄せるものです。
死に至る愛というカテゴリにて。
こちらは、じわじわ気になっているドラクロワ。
バイロンの物語を元にしたそうですが、同じくバイロンの書いた戯曲であり、バレエになった「海賊」と似ている気がします。(名前は違いますが)
写真撮影可能なコーナーは最後だけでしが、ちょうど気になっていた絵がありました。
アリ・シェフェール 《ダンテとウェルギリウスの前に現れたフランチェスカ・ダ・リミニとパオロ・マラテスタの亡霊》 1855年、油彩/カンヴァス、171 x 239 cm
ちょうどダンテの神曲について調べたり読んだりしていたところに、ダンテ本人が描かれているという!遊び心があります。
クロード=マリー・デュビュッフ《アポロンとキュパリッソス》 1821年 油彩/カンヴァス 192 × 227,5 cm アヴィニョン、カルヴェ美術館
まるでバレエのワンシーンにしたいかのような美しい二人の構図です。
モチーフの好みは、コテコテに西洋文化圏なので日本人的感覚からすると分かれるかもしれません。だとしても、わからないけれどなんか美しい…というのは感じられるのではないでしょうか。
古代の神話やキリスト教絵画のアイコンが難しそうに見えたとしても、なかなかルーヴルに行くことが難しい今、ぜひ本物に触れてみる体験はいいのではないかと思います。
全体を通してつくづく感じたことは、とてもシンプルですが、ルーヴル美術館の作品規模の大きさです。美術館そのものの歴史が古いですし、やはり国をあげて守り抜いていた威厳というか、プライドのようなところまでも感じます。
愛というテーマが気になり観に行きましたが、一点一点の大きさが今回は立派な物が多く、近年国内で観ていた規模と比べて久しぶりに存在感が大きい!という新鮮で素朴な感覚をも持ちました。
愛については、現代の自由恋愛のようなことだけでなく、古代の神話で考えられていた愛の形や、家族愛、親子愛、孝心、キリスト教な愛、友愛、慈愛、欲望と暴力にいたるまで、いろいろな側面での愛について取り上げられていました。
この展覧会は人気なようで、年代広く、若い世代のカップルで観にきている方々もたくさんいましたが、ファッション的に楽しみに行くというよりは、単なるキューピットと愛の矢というだけではないので、西洋的な愛の概念という前提をもって観に行くと馴染みやすい展覧会かと思います。
キリスト教絵画についてはやはり宗教的な意味が強いので、鑑賞というよりも歴史にふれたという感覚の方が強かったです。
今後の創作のテーマにもなるかもしれない出会いがいくつかありました。
もっとまた別の作品でもルーヴル美術館に来日して欲しいです。
みなさんもぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。