バレリーナがしなやかに体を動かせる秘密に、
「力加減を、強くも弱くも自在にコントロールできる」
ということがあります。
もちろん柔軟性も筋力も必要ですが、もっと言うと、
体に備わった機能(筋力・関節の可動域・柔軟性)をコントロールする意識がずば抜けて鍛えられています。
たとえば、体を「車」にたとえてみます。
ある高級車があるとしましょう。
高性能なので、アクセルもブレーキもギアチェンジも絶妙な具合で機能するように作られています。
体の筋肉も、アクセル・ブレーキなどと同じように、収縮したり緩めたりしてパワーを生み出します。
では、高級車に乗る運転手は、どんな運転をしても鮮やかに乗りこなせるのでしょうか・・・?
そんなことはありませんよね。
どんなにハード面での高性能な機能が揃っていても、それを上手に活用するには、それなりの技術・ドライビングテクニックがいります。
運転技術が下手だと、ブレーキなどの部品を磨耗させてしまったり、カーブをうまく切れなかったり、急発進・急停止の繰り返しで落ち着かない運転になってしまうことでしょう。そして、何より危険です。
(最近の高性能な車は、多少の下手さをカバーしてくれる製品もあるかもしれませんが、)
基本的には、
どんなに高性能であっても、
運転する人の「上手な使い方」があってこそ、
美しく乗りこなすことができるはずです。
人間の体も、同じです。
バレリーナは、体の機能自体(筋力・柔軟性)が高性能となるようにトレーニングしつつ、
体を操作する使い手としても、上手に使えるよう身体意識を高めていきます。
バレリーナに限らず、どんなアスリートにも通じることでしょう。
車は、発進・加速・減速・停止などといった機能がありますが、
体であれば、筋力の強さ・瞬発性・持続性 などの運動機能があります。
強く動かすべき時は、しっかりと強靭に。 弱くやさしく動かす時は、どこまでも軽くなめらかに。
高性能な体ほど、振れ幅を大きく活用して、巧みにコントロールしながら両極端を極めていきます。
ジャンプなどで瞬発的に力を100%出さなければならないときは、忠実にその通りに行います。
跳び箱や走り幅跳びのように、一気に100%の力を出します。
一方で、脚を頭より高く上げる(デベロッペ)状態でキープするときは、長い時間、重力から支える力を出し続けます。
重量挙げや、逆立ちなどと同じように、ずっと力を出し続けます。
または、白鳥の腕の動き(ポール・ド・ブラ)で軽やかさを出したいときは、どこも固めることなく、白鳥の本物の羽のように軽さを見せます。
生まれたての赤ちゃんの頭をなぜるように、手先はどこまでもやわらかくしながらも、背中から羽ばたく動きを反復し続けます。
バレエの動きは表現豊かであるために、強弱・軽さ・瞬発性・持続性など、様々な種類の動き方があります。
それらをふさわしいタイミングで、適正に操るために、 スーパーカーを操るドライバーのように、体の使い方を洗練させていくのです。