今でこそ当たり前となったピアノによるバレエレッスンの伴奏ですが、その歴史はまだ100年ほど。ピアノがレッスン伴奏の楽器として台頭する前は、バレエレッスンはヴァイオリンによって伴奏されていました。その歴史は17世紀初頭まで遡り、名ダンサーとして名高いルイ14世も、エドガー・ドガの絵画の中に描かれたオペラ座の踊り子達も、みなヴァイオリンの伴奏でレッスンをしていたのです。
こちらのアルバムは、その時代を再現するかのように構成された弦楽器によるバレエレッスン音楽集です。
例えば、プティパと共同で振付をして、白鳥の湖やくるみ割り人形などでも素晴らしい群舞の踊りを仕上げたことで有名なイワノフも、学校でレッスン指導するときはヴァイオリンを自ら演奏して踊りの伴奏していたようです。(ペテルブルグのバレリーナ―クシェシンスカヤの回想録)彼の場合はバイオリンが好きな演奏家であったことも影響していることと思います。
今はレッスンにピアノ音楽を使うことがほぼ100%に近いです。
つまり「バレエレッスン=ピアノしかありえない」のだと思いがちな今日にとって、バイオリンの時代も当たり前にあったのだということは、音楽性を考え直すヒントであり、ダンサーみなに興味深い話であると思います。