バレエヨガインストラクター三科絵理のブログ

バレエヨガインストラクター三科絵理

ミハイロフスキー劇場バレエでの舞台撮影

ロシアで今とても旬の躍進的な名門バレエ団、ミハイロフスキー劇場バレエの舞台撮影に夫が協力させていただきました!私も一緒に撮影活動のサポートをしています。「原典版パリの炎」「ナチョ・ドゥアト版眠りの森の美女」ともにいずれのキャストも素晴らしい方々でした。ご覧になられた皆さまも感動冷めやらぬといったところだと思います。若くしてすでに貫禄あるスターのアンジェリーナ・ヴォロンツォーワさん、公私パートナーのアナスタシア・ソボレワさん&ヴィクトル・レベデフさん、安定感あるノーブルなイワン・ザイツェフさん、凛々しい姿でSNSでも人気のジュリアン・マッケイさん、夏のロシアバレエツアーでも大人気のオクサーナ・ボンダレワさん、長年日本通のベテランご夫妻イリーナ・ペレンさん&マラト・シェミウノフさん、マリインスキーから移籍したエルネスト・ラティポフさんなど、錚々たる豪華メンバーでした。美しいという点は共通でも、みなさん個性がまったく違うダンサーで、連日各回見ながら見応えが濃いツアーでした!これは追っかけてしまうファンのみなさまのお気持ち、すごくわかります!!!私も毎回手が痛くなるほど拍手いたしました(笑)

「パリの炎」は最近のボリショイバレエでの版と比較されやすいですが、ミハイロフスキー劇場バレエは原作に近く、物語はわかりやすくてハッピーエンドに終わります。1950-60年代頃(前後?)の「パリの炎」バレエ映画のような映像と似たような流れでした。理解しやすい物語で納得がいき、民衆の革命に捧げたエネルギーが気持ちよく昇華される作品です。

民衆と王侯貴族たちとの対比が強く描き出され、特に第3幕では自由を謳う舞がトリコロールカラーとともに象徴的な場面を描き出します。

革命戦争の中で犠牲になる登場人物もいましたが、それでも民衆たちが武装して立ち上がりナショナリズムを勝ち取っていこうとする姿はドラマティックでした。

もともとこの作品は、ロシアでも自国の革命の歴史を持っているわけですが、過去の祝祭として題材をフランスに映してバレエ化した作品。ロシアなのに…という気がしてしまうかもしれませんが、政府の検閲などが強い時代において物語の場面を変えたりあらすじを変えるというのはよくあることです。日本でも歌舞伎で検閲を回避するために工夫されることはありました。やはり同時代を直接的に取り上げるのは憚られると、江戸からみたら室町時代の物語にした方が扱いやすい、などといったことはあったのです。

話を元に戻して、パリの炎は第2幕のルイ16世とマリー・アントワネットが宮廷に登場し、火種のきっかけとなる場面を描いています。それが、プロイセンに革命を鎮圧してもらうために軍を要請しようと決心するところです。

テンポよく短い間にストーリーが展開していき、このときにルイ16世は、保守派と思われる貴族に請われて承諾のサインをしている姿がほんの数秒の出来事でしたがいい描き方だなと個人的に思いました。絶対王政でも政権を握ろうとした貴族は周りに取り巻いていたでしょうし、王一人の判断ではないという解釈が見えたのがいい視点だなと思います。

ナチョ・ドゥアト版の眠りの森の美女は、何度見ても飽きない洗練されたスタイルで、大人にもフィットするお伽話の世界観がとても気に入りました!!眠りの森の美女はどうしてもメルヘンの子ども向けなところが強く出やすかったり、場面によっては中だるみしやすいこともなくも無いですが、ナチョ・ドゥアト版は長すぎるものは省略されたり間を短くしながらも、古典版の象徴的な良さを残しながら、クラシックの美しさをより動線の美しさで引き立たせてくれる演出でとても魅了されました。

複雑なテクニックを見事に踊り切るダンサーたちはあっぱれです。ファルフ・ルジマトフさんのカラボスは危険なほどにセクシーで美しく、デコルテの大きく開いたドレスがマレフィセントのようで男性と思えぬ妖艶さでした。ヘアメイクもかなり細部までこだわりがなされていて、舞台上にいると必ずカラボスを見てしまいそうなほど…。

ほかに、国王や王妃、貴族らのドレスや衣装、また舞台美術もセンスが素晴らしくて色彩調和にほれぼれしました。衣装を見ているだけで美術館に行った気持ちになれます。幕と照明と布などを効果的に使用して、蜘蛛の巣のような場面や、いばらの生い茂る森、そして薔薇のような花が咲き誇る瞬間などは夢を見ている、いや生きているような気分です!!!美術デザイナーの仕事がここまで活かされるというのは本当に貴重で素晴らしいことです。ナチョ・ドゥアト版がヨーロッパなどですでに愛され上演が繰り返されているというのも納得で、日本はまだまだ頑張らないといけないと思わされます。

写真家 夫 堀口祐樹のインスタグラム @hori.ballet

https://instagram.com/hori.ballet

濃密であっという間の日程でしたが、YouTubeでインタビューさせていただいた戸塚彩夏さんをはじめ光藍社の皆さまの想いも伝わってくる舞台裏でした。

旧レニングラード国立バレエは私も子供の頃に鑑賞して勉強させていただいたバレエ団です。

伝統を躍進させながら、新たに現代的な取り組みを続け、トップダンサーのレベルの高さが輝く旬な姿を日本に見せてくださり、今のバレエ界にとって貴重な機会でした。

撮影写真はすでに光藍社さんのインスタグラム @koransha_concert で投稿され始めていすのでぜひご覧になってみてくださいね(まだカーテンコールが中心ですが、取っておきがたくさんあります!)

https://instagram.com/koransha_concert

カメラマン活動としては、撮影後にレビューをして、選定や調節を行っていき、みなさまへの目に届くところに掲載されていきます。

撮影の疲労も和らぐほどダンサーの写真が素晴らしく、舞台美術や照明衣装すべてのトータルデザインが美しい舞台でした。

貴重な機会をありがとうございました!!

ミハイロフスキー劇場バレエの招聘を手掛けた光藍社の戸塚彩夏さんにインタビューした動画もぜひご覧ください。

【バレエの仕事インタビュー】海外バレエ団公演企画するプロデューサーってどんな仕事?光藍社 戸塚彩夏さん(前半)

https://youtu.be/B7oOrXzKxSs

海外のバレエ鑑賞ファンの質問に答えます!【バレエの仕事インタビュー】光藍社 戸塚彩夏さん(後編)

https://youtu.be/oCypqALsva0