ミハイル・フォーキンとベラ・フォーキナによる『シェヘラザード』(1914年)
シェヘラザード (リムスキー=コルサコフ) - Wikipedia
バレエ・リュスの時代にミハイル・フォーキンが振付した「シェヘラザード」Scheherazade は、現代のバレエ・ガラで経験豊富な男女のダンサーがパドドゥを踊ることの多い名作です。
1910年にパリで初演され爆発的な人気を得て、たった5回だけだった…という幻の作品が、今も復刻され続けています。
シェヘラザード風のドレスを着こなしパーティーが流行したのだとか。真似してみたくなる気持ち、なんだかわかるなぁ…!
バレエのシェヘラザードをサクッと知りたい方へ、短くまとめました。
物語全編で全一幕の短いバレエですが、エキゾチックな世界観と、美女の愛と危険に迫る衝撃の展開にぐっと引き込まれてしまいます。
バレエではパドドゥ(アダージオ部分)だけやることが多い昨今、なかなか「シェヘラザード」の物語全一幕を観たことがないという方も多いですよね。映像を探してみると見られるかもしれません。
こちらのDVDでは、スヴェトラーナ・ザハロワさんとファルフ・ルジマートフさんの演じるマリインスキー (元キーロフ)バレエのシェヘラザードが収録されています。
約30分の一幕からなる物語は、物語バレエの平均より短い(他は二幕、三幕構成で二時間、三時間しても普通ですよね)のにもかかわらず、心にグッと刺さるストーリーです。
あらすじ
舞台は昔のアラビアの世界(原作はササン朝ペルシアという説もあります)。
とある国にシャリアールという国王がいました。美しい寵姫(王妃)ゾベイダをもち、ゾベイダと女奴隷たちを取り囲んでハーレムの居室にいます。
そこへ国王は弟の王と狩りに出かけると言います。
珍しいことなのでみな驚きました。
実は、国王がいない間に「ゾベイダが裏切りをしないか?」確かめるための弟と立てた企てなのです。
自由を得たとばかりに喜ぶゾベイダ。
女奴隷たちは、臣官長(看守となっていることも)を買収して、男奴隷たちの閉め出された鍵を得ます。
みなで歓喜の盛り上がりとなり、ゾベイダのお気に入りの金の奴隷という男性と逢瀬に夢中になります。
そこへ、急に国王シャリアールが戻り、裏切りの光景を目の当たりにしてしまいます。
激怒した国王は、むごいことに金の奴隷や周りのみなも殺してしまいます。
絶望にくれたゾベイダは、悲しみにあまり短剣で自害してしまいます。
国王は、ゾベイダを失ってしまいました。
千一夜物語の冒頭に出てくるエピソードの一つです。
千一夜物語はアラビア語で書かれていた本でしたが、フランス語に訳され、のちにヨーロッパ中で人気の物語になりました。バレエ化されるのも納得です。
ガラのパドドゥでよく踊られる場面は、1番の美しい盛り上がりを見せるゾベイダと金の奴隷の舞です。
2人の身分は結ばれることのない運命ですが、互いに強く惹かれ合います。
シェヘラザードは交響曲の音楽も有名なので、バレエを知らなくてもメロディを聞いたことのある方は多いでしょう。
ドラマチックに感極まって喜びを隠しきれないパドドゥになっていたり(上のザハロワさんの演技は物語上歓喜の高ぶりを露わにしています)、抜粋だけですと物語の切なさを表現して崖っぷちに立たされたような愛する二人のように表現されることもあります。
2018年の世界バレエフェスティバルでの、アリーナ・コジョカルさんとヨハン・コボー夫妻によるリアム・スカーレット版シェヘラザード・パドドゥが印象的でした。
今年はロシアン・バレエ・ガラ2021でオクサーナ・ボンダレワさんとアンドレイ・エルマコフさんの舞台で久しぶりに見れました。
解釈や演出によってもさまざまにダンサーが踊り、客席を引き込む作品です。
「シェヘラザード」とは誰のこと?
そもそも「シェヘラザード」とは千一夜物語(アラビアンナイト)の語り部の女性の名前です。原振付ミハイル・フォーキンのこのバレエでは、シェヘラザードは登場しません。長いアラビアンナイトの物語からのインスパイアということです。
シャフリヤールに物語を語るシェヘラザード。インド生まれの英国人画家アーサー・ボイド・ホートン(1836 – 1875)の木版画
https://ja.wikipedia.org/wiki/%25E5%258D%2583%25E5%25A4%259C%25E4%25B8%2580%25E5%25A4%259C%25E7%2589%25A9%25E8%25AA%259E
バレエ・リュスの初演
千夜一夜の物語から着想を得た、作曲家リムスキー=コルサコフが「シェヘラザード 」という交響曲を書きました。彼の亡き後に、バレエ・リュスによって振付が仕立てられ、このバレエが構成されました。
バレエ・リュスを率いていた興行主ディアギレフにとって、「シェヘラザード」は理想の総合芸術を実現したと言います。フランスでは目新しい姿でしたが、それを多くの人が認めた画期的な出来事でした。
舞踊だけでなく、音楽、衣装、デザイン、などの統合をしてバレエを総合芸術とさせたのです。
バクストによる舞台デザイン File:Scheherazade (Rimsky-Korsakov) 02 by L. Bakst 2.jpg - Wikimedia Commons バクストによる衣装デザイン File:Scheherazade costumes list by L.Bakst.jpg - Wikimedia Commons
Costume for Zobeide in 'Scheherazade', designed by Léon Bakst, about 1911, Europe. Museum no. S.875-1980. © Victoria and Albert Museum, London
しかも踊り手は超人気のニジンスキーらを起用して、人気に拍車をかけました。
金の奴隷のニジンスキー
現代にいたるまでさまざまなバレエ団が新たに演出化を試みています。
パドドゥや1幕全体を見られる機会がありましたら、壮大な美しい音楽の調べと舞踊のハーモニーを楽しんでみてください。