ここぞ、という大事なとき。
気合いを入れて、準備してきたものを披露するとき・・・
ドキドキするけれど、心落ち着けながら、その瞬間を待つ。
みなさんは、日常でそういう瞬間はありますか?
バレリーナですと、舞台の本番前。
緊張しながら、出番を待ちます。
この緊張感というのは、経験した人にはわかる、期待と不安が入り混じります。
このヒヤヒヤ・モヤモヤ・ドキドキする感じと、ワクワク・ときめく感じ。
このスリリングさが、やみつきになってしまう・・・
というのが「舞台人あるある」です。
この日までに、できるかぎりのことを尽くして当日を迎えます。
それでも、どんなに練習をしてきても、不安というのはつきまといます。
舞台は生ものだからこそ、何が起こるかわからない・・・
多くのダンサーが知っていることです。
それでも、1日24時間のスピードは、だれでも平等に与えられているもので
待つ時間が、長〜く感じられたとしても、やり過ごすしかありません。
その間、ダンサーは、舞台の袖や裏側で、ストレッチをします。
ここでのストレッチは、柔軟性を高めるとかの次元ではありません。
もちろん、カラダを温めるために動かしますが、当日に「直前だから柔軟性を高めよう〜」なんてもう遅いですし、
それよりも、
自分の心を整えるために、ストレッチをするのです。
不安に打ち勝つ
やるべきことに集中する
余計な緊張をほどく
そうして、今の自分を落ち着かせるのです。
この時間って、「魔の時間」です。
上手くいくかは、誰にも、わからない。
本人だって、指導した先生だって、舞台のスタッフだってわからない。
でも、全員が、上手くいくことを、信じている。
これは、舞台袖にしかない、みんなで祈っている特別な空気感です。
スポーツの試合では、優勝者を決めるために競い合う緊張がふつうです。
バレエの公演の場合は、競っているわけではなく(例外的にコンクールは競争がありますが)、
同じ公演を作っているダンサー・舞台監督・スタッフは、みんな同じ成功を祈っている。
この空気感が、舞台人としては、とても好きです。
どのダンサーも、自分自身と向き合っている姿が、とても美しいのです。
客席からは見えない一面でもあります。
凛とした姿は、理想の自分に近づく時間でもあります。
でも、隣のダンサーが美しいなぁ・・・と思っても、ぼーっと見とれていてはいけませんし、正直いちいち構っている余裕もありません。(^^;)
舞台袖にいる人は、自分も、やるべきことをやらないといけないのですから。
私は舞台の袖で緊張を手放したいときは、よく、180度開脚をします。
股関節をゆるめると、全身の余計な緊張が抜けやすくなります。
また、立ったままの前屈もします。
背中や首や肩の緊張をゆるめて、できるだけ重力に任せて前屈していると、雑念を取り払い、心がクリアになっていくのです。
これらは、日常生活でも使えます(^^)
自分が「なんだか緊張しているな」というときは、どんな風にすればカラダがリラックスするか知っています。
カラダと心は、つながっている。
この原則が生きてくるのです。
だから、ストレッチをするとは、日頃の柔軟性を高めることももちろんですが、
心を落ち着けて、理想の自分に近づく時間でもあります。
あなたは、どんな自分に出会いたいでしょうか。
理想の自分に近づく時間。
自分自身を整え、自信につなげる時間。
大切に、生きていきましょう。