家でゆっくり過ごす時間に、バレエでも観ようかな〜という方にオススメの映画があります。
「ロパートキナ 孤高の白鳥」
マリインスキー劇場のプリマバレリーナ、ウリヤーナ・ロパートキナというバレリーナに密着したドキュメンタリー映画です。
この写真の通り、白鳥がとても似合うロパートキナ。
映画全体を観た感想としては、
ロシアバレエの伝統をしっかりと受け継いでいながらも、自分の可能性の限界にとらわれない、芸術家としてピュアに生きている姿に感化されました。
自分の求めていることを正確にわかっている。
だからやるべきことをやり、まっすぐに向き合う。共演のダンサーともしっかりと解釈を話し合う。衣装や照明などにも自分の考えを伝えて、表現したいものを100%表現できるように整えるすがたも印象的でした。
バレエの聖地ともいえる、サンクトペテルブルクの街が培ってきたバレリーナの精神性を体現する人だ、と言われていました。
バレエにも、流派やお国柄が現れるもので、
たとえば国をまたいで各地に移籍しながらいろいろなスタイルを併せ持つようなダンサーも多い中で、
ロパートキナは、ロシアバレエの責任を自分でしっかりと意識して、重厚な歴史を受け継いでいるということに尊敬します。
しかも、だからといって、自分のフィールドを固定するのではなく、世界中の振付家ローラン・プティや、バランシンなどのモダンな作品も果敢に挑戦してものにしていく才能が素晴らしいです。
フランスのパリ・オペラ座のエトワール(最高峰のバレリーナ)アニエス・ルテステュが、ロパートキナの友人として登場するのですが、
会う前からロパートキナの踊りを素晴らしいと見ていたけれど、実際に会ったらすぐに好きになったと言っていました。
流行に左右されない、売り込まずに目立ちたがらない、キャリアに箔がつく役をとろうとせず自分の芸術に集中している…
こうした面は、バレリーナに限らず凛と生きる素敵な女性に共通する部分がありますよね。
トップバレリーナとしてキャリアを歩んでいるロパートキナはどんな子ども時代だったのだろう…と思いますが、
生まれはクリミアの小さな町で、お母さんがワガノワのバレエ学校に受験させに連れて行ったそう。
ワガノワの学校の中を歩きながら、ロパートキナが思い出を語っていました。
ワガノワはロシアの伝説的なダンサーがみな学んだ学校。大きな重圧を感じていたそうです。
特に最後の卒業試験は、本当に緊張していたと振り返っていました。
毎朝好きな鏡を選ぶの。バーで、ゆがんで見える鏡の前になると一日気持ちが上がらない。だから早くきて映りの良い鏡を選ぶのよ、なんて話す姿を見ていると、ロパートキナも昔はバレエ学校でドキドキ学んでいた子ども時代があったのだなぁと思わされます。
バレエ作品の中でも「愛の伝説」が好きというロパートキナ。日本ではなかなか上演される機会が少ない作品です。
彼女自身、若い頃よりもこの作品に込められた「愛」の意味について理解が深まっていき、表現に深みが出せるようになったそう。
愛って所有することなのか?いや、与える愛のことなのだ…と解釈できた、と。
そこまで思慮深く、動きにも想いを込めることができるというのがステキですよね。
栄光は忘れること。
そう話すロパートキナの言葉がとても輝いていました。
いろいろと感銘を受けて、これだけ書いても書ききれないくらいですが…
映画では彼女の美しい踊りも見られますので、気になったらぜひ見てみてください。果てしないパワーをもらいました。