バレエヨガインストラクター三科絵理のブログ

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ザハーロワ&レーピン トランス=シベリア芸術祭2019

遡り投稿になりますが、6月にボリショイバレエのプリンシパルであるスヴェトラーナ・ザハロワとご主人で世界的ヴァイオリニストのワディム・レーピンご夫妻が主役の《トランス=シベリア芸術祭 in Japan 2019》〜ザハーロワ&レーピン 夢の共演 part2 パ・ド・ドゥ for toes and fingers 〜に行きました。

トランス=シベリア芸術祭とは、ワディム・レーピン氏が「芸術を“旅”と捉え、東西の架け橋にしたい」という思いで、シベリア横断という意味を込めて名付けた芸術祭を催したそうです。

結論からいうと、1時間半の休憩なしであっという間でしたが、バレエもヴァイオリンも夫妻ともにロシアを代表する極めてレベルが高いアーティストなのでとても満足してしまいました!

もちろん、もっとザハロワを見たい、もっとレーピンの弦の音色を聴きたいという気持ちはありましたが、客席を楽しませるという観点では十分楽しませてもらえました。

ザハロワは

ライモンダのアダージョ

ヘンデル・プロジェクトより前奏曲とパドドゥ2

カラヴァッジオ

瀕死の白鳥

レ・リュタンよりA・パッツィーニ 妖精の踊り

多彩な作品を一挙にテンポよく披露されました。王道の白鳥姿もライモンダもコンテもお茶目な姿もすべてが愛くるしい!!しかも仲睦まじいレーピン氏とのステージとあって、いつも以上に幸せオーラに包まれていました。

レ・リュタンよりA・パッツィーニ 妖精の踊りは、とってもチャーミングなのです!!ザハロワが踊る姿はネットでなかなか見られないかもしれませんが振付ヨハン・コボーの奥様アリーナ・コジョカルの動画を見つけましたので貼っておきます。(スティーブン・マクレイ、セルゲイ・ポルーニン)1分38秒ごろから始まります。

この映像と同じようにヴァイオリンのレーピン、そして管弦楽の奏者の方々が下手側に座り、ザハロワたちは中央から上手で見事に踊っていました!

ザハロワの崇高なまでに美しい姿の背景にはあくなき完璧主義の姿勢があるとよく聞きます。自分に厳しいからこそ自己を高めていく姿は尊敬に値する世紀のバレリーナの一人。

そんな彼女が、きっとバレエ団の主役を踊る時にはなかなか現れないだろうなという素顔の自然体な感じがとてもいいなと思えました。それは大好きなレーピン氏と一緒に作った公演だからこそだったのだと思うのです。レーピン氏を拝見するのは初めてでしたが、とても軽快で大らかさもあり、技巧にも卓越した超人的な方だなと実感しました。楽観的にも遊び心も見せられる人柄を舞台で見せていらしたので、その相性が二人を結びつけたのでしょうね。なんてステキなカップルなのでしょう。

ザハロワのコンテンポラリーでは、カラヴァッジオがとても神々しい黄金の光に包まれていました。こちらの作品は、こちらを含む最近3公演(1つはDVD)で見る機会を得たのでまた書きたいと思いますが。男性と手を取りながら女性のアラベスク・パンシェがとても大きく、またポアントを男性の胸に向けながら反っていったり、非常に柔軟性が求められ、それでいて強い芯がないと持続できない複雑なパドドゥ。身体美がひときわ目立つ作品で、ザハロワとジャコボ・ティッシの共演は贅沢でした。それからの瀕死の白鳥は、ザハロワの十八番とも言える白鳥の舞いで、ああやっぱりスワンも見せてくれてありがとうという気持ちになります(笑)。

そこまで身体美の輝くザハロワを見つつも、バレエとの間に弦楽が入り、レーピン氏率いる演奏が対比をなすように続きます。(バレエ曲は演奏できるものもありましたが、録音もありました)

バレエの観客としては、ザハロワの踊りを見たらもう満足してしまいそうだと期待していましたが、実際はレーピン氏によるサラサーテのツィゴイネルワイゼンに鳥肌が立ち驚きました!超絶技巧で有名ですし、知っている曲でしたが、その前まで笑いをとったり和ませていた人とは別人のように神が降臨したのでは、と思わされました… そして高まっていくほどにヴァイオリンがよく鳴っていくのです。ストラディバリウスくらい古い時代の楽器を使われているそうですが、聴衆が惹きつけられるほどより楽器が目覚めていくようでした。ストラディバリウス 展でも演奏家さんが「楽器を(眠りから)起こす」という表現をされていましたが、息を呑みました。

その後のタイスの瞑想曲は、楽器が落ち着きを取り戻し今度は違う表情を見せようと言わんばかりにまたゆったりとした一音一音がさらに輝きを増していました… あの流れは、なかなか出会ったことのない幸福感で、本当に最高でした。

群馬の前橋市民文化会館は、私たち夫婦も撮影や講座でご縁のあるキエフ・バレエも来日公演を冬に開催されます。

来年のお正月に日本で白鳥の湖全幕公演デビューをするアンナ・ムロムツェワさんのポスターも発見。私の夫(舞台カメラマンをしています)がキエフバレエで最も撮影している新星バレリーナさんの一人で、アンナさんはダンスマガジンのインタビューで憧れのバレリーナはザハロワさんと答えています。お二人ともキエフご出身で長身の美しいプロポーションが似ていらっしゃると感じます。こちらも楽しみに思いながら劇場を後にしました。