わかっているようで、わからない「体の内側」の感覚
ヨガを始めたい、深めていきたい、という人にとっては、「体の内側に意識を向けること」が大切なキーワードになります。
でも「”体の内側”ってよく聞くけれど、一体どんな風に感じ取ればいいのだろう?」と思っている方もいるかもしれません。 私もかつてはそうでした。
バレエを長年続けてきた後にヨガを深めてきた私が、役立ったことは、ヨガでよく行われる「ボディスキャン」です。
いつでもどこでもできること。
そして、ふだん無意識で眠っている細かな体の意識(身体意識)が研ぎ澄まされること。
瞑想がなかなか集中できない方でも、取り組みやすいと思います。
全身に意識を向けているようで、実は向いていないかもしれない
ボディスキャンを説明する前に、「体の内側への意識」「身体意識」を考えるうえで、脳の構造を紹介します。*1
体の神経系は、体の各部位とつながって、運動を計画したり実行したりしています。
実は、その重要性・必要性に応じて、脳の中の神経・ニューロンの大きさを割り当てています。
その様子を図示したものがこちらです。
脳の断面の形にそって、ホムンクルス(小人)が描かれているのがわかるでしょうか。少し不気味ですが・・・
繊細で高度なコントロールが必要な部位については、多くの神経回路とニューロンを占めていて、 逆に、低いレベルでのコントロールで十分な部位は、わずかしか占めていないのです。
体の大きさに関係ないのです。
特に、顔、舌、手の指などが大きく占めていて、逆に上半身、骨盤、おなか、太もも、ふくらはぎなどはほんのわずか。
みなさんも、自分の体に対するイメージを振り返ってみてください。
神経が集まっていて、感覚が敏感なところもあれば、逆にふだん意識を向けないところも多くあることでしょう。
手全体や、顔、舌には自然と神経が集まっているために高度な制御がしやすい
上半身・体幹・脚などの「姿勢を保つ筋肉」は、さほど重要視していない
この2点が大きなポイントです。
脳内での体の意識は、訓練で拡張することができるのか
先のホムンクルスを見てしまうと、運動で鍛えることは難しそうと思ってしまいそうですが、そんなことはありません。
体の意識(ここでは身体意識と呼ぶことにします)は自分の意思で拡張することができるのです。
脳はエネルギーに満ちていて、適応性があります。それぞれのニューロンの数は増えることはありませんが、新たな要求を満たすために、既存のニューロンの間で回路がすばやく作られるのです。*2
わかりやすい例は、肉体の限界を超えて制御していくアスリートたちでしょう。
アスリートの身体意識は、限界を拡張させてきた賜物
アスリートは、一般には潜在的に眠っているような細かい身体意識を、目覚めさせて拡張しています。
人間の常識を超えて、肉体の限界に挑戦していく先に、脳の運動野も変化しつづけているのです。
その際のイメージトレーニング、イマジネーションの力は想像以上に大きいのです。 脳の適応性は、自らが想像している以上に大きい。
バレエのトウシューズも、「よくこんな形で立てますね」と言われますが、訓練の先に身体意識が鍛えられた例です。もちろん体の特徴にもよりますが、そもそも「無理」と思ったら立てません。
アスリートの細かいレベルに達しなくとも、パフォーマンス性の高い体の使い方・身体意識を手に入れることは、努力次第で誰でもできると思います。
身体意識が高まると、パフォーマンスの精度が高まるだけでなく、肉体に宿る精神性も高められるように思います。
ボディスキャンのやり方は、次に続きます。
「体の内側への意識」を研ぎ澄ませ、集中力を高めようー ボディスキャン(2) - バレエヨガインストラクター三科絵理のブログ