子どもの頃に指導していただいた言葉は、大人になっても、よく思い出すことがよくあります。
小学校高学年くらいの頃、よくクラス全体に指導されたのが「どんなに狭い場所でもちゃんと最後まで踊りなさい」 ということでした。
やり抜く覚悟です。
「これ以上進む場所がない」とか「脚を上げる空間がない」などと決め込んで、踊りを中途半端に手を抜かないよう、先生が口すっぱく仰ってくださったのだと思います。
思春期はメンタルのゆらぎも出やすいですし、中途半端に手を抜くということを覚えないよう気を引き締めてくださったのでした。
その言葉の意味は、単に面積のことだけではなかったように感じます。
もちろん、スタジオ・舞台全体の面積をうまく計算できずに踊ってしまうのは、空間把握が出来ていない状態なので、直さないといけません。
でも、それだけではなく、与えられた環境がどうだとしてもダンサーとしてやるべきことをやりなさいという先生からのメッセージでもあったように思います。
無駄な言い訳をせず、狭い場所ならば工夫をする。
足幅を小さくしたり、動き方を調整したり、踊りで大切な見せ場をきちんと優先させる。
きちんと自分の頭で考えないと、踊れないからです。
その先生は戦後の動乱でもバレリーナとしてキャリアを切り拓いてこられた方でした。物資が少ない中でバレエ用品はそう手に入らず、踊りを披露する場所も、今のような舞台環境ではなかったのだと思います。
狭い場所でも、最後まできちんと踊りなさい。
表現をきちんと見せなさい。
与えられた環境がどのようなものであったとしても、ダンサーはダンサーでありなさい。
ふと思い出すたびに、先生の魂が宿ってくるような気がしてきます。