1月17日(木)はロシア国立ワガノワ・バレエ・アカデミーの来日公演「人形の精」と「パキータ」を鑑賞しにオーチャードホールへ出かけました。
かのワガノワの来日公演とあって、バレエ団ではないですが世界最高峰のバレエ学校の生徒を見ようというバレエ通な観客の方々が多かった印象です。
人形の精全体を日本で見られる機会は少なく、しかもワガノワでの正統派ロシアスタイルを見たいと思っていました。
初級学年〜上級学年のさまざまなキャラクターがカラフルで異国情緒あふれる出で立ちで現れます。
プログラムより
- 目覚め
- うさぎ
- わがままな人形
- チロル
- 赤ちゃん人形の踊り
- 道化
- アルルカン
- ロシアの人形
- おじぎをする男
- 兵隊とチロル人形の行進
- 中国人形
- フランス人形
- 日本人形
- スペイン人形
- パドトロワ
主役の人形の精であるリジー・アブサドジャニシビリさんはときめき溢れるお人形そのものでした。人形の精のパトトロワとして有名なのが、ピエロの男性二人と踊る曲です。作品の最後に登場するのですがガラ公演などでも演じられることがあります。3人とも注目の生徒さん方なんだろうなというのが伝わってくるほど、きっちりと真面目にこなすダンサーたちでした。
ピエロの衣装などからバクストのデザインが受け継がれているのが見られたのは嬉しかったです。ピエロに限らずどれも衣装が引き立っていました。人形の精はピンク色のアクセサリーがゴージャスでした。ほかの人形もフランス風はパールの大きなネックレスがあったり、まるで子供たちの夢の世界のよう。メイクも目元にラメを使っているように見え、とてもきらびやかでした。
中国と日本は衣装が一見似ていて着物風で黒いタイツなのですが、中国は傘、日本は扇子を持っていました。
ロシアはハンカチを持っていて、白鳥の湖のロシアの踊りなどにも見られるような伝統的なロシア民族舞踊らしさがありました。
やはりプロの演技とは一味違う初々しさがあり、すべてに全力投球でありながらも身体能力はみんな著しい。未来輝かしい子供たちの可能性と、バレエの世界(西欧社会)から見た世界各国への憧憬が織り混ざった舞台でしたね。
後半はパキータ。エトワールは、アレクサンドラ・ヒテーエワさん。すでに注目株のダンサーで舞台上の存在感は圧倒的でした。リュシアンのマイケル・ジョージ・バルキジージャさんは髭の似合う紳士でエトワールのパートナーにぴったりでした。
プログラムより
- ポロネーズ
- ガボット
- パドトロワ
- グランパ
- コーダ、フィナーレ
人形の精よりももっと上級学年のダンサーたちが中心になって、ソロ、パドトロワ、グランパドドゥなどを見ることができるのでこれだけでもバレエの醍醐味に満足するなという気持ちでした。舞台美術も人形の精はスクリーンだけで簡素でしたがパキータは一般的な荘厳な雰囲気に。
パキータは私自身も思い入れが強いので青春の懐かしさマックスです(笑)。
振り付けはさすがワガノワというような、技術とクオリティを高めるのにふさわしい難しさがあります。ワガノワで毎年しっかりと進級していく生徒の訓練のされ方は、見ているだけでも参考になります。
夏にワガノワの先生のワークショップで「伸びる喜びを感じて踊って」という指示出しがあり、それが特に印象に残ったので私の生徒さん方にもお話ししていましたが、まさにそれが全員のDNAに脈々と流れている。そういうものを見ると胸がぎゅーっと熱くなります。
https://blog.coruri.info/entry/2018/08/21/120027
ワガノワメソッドは上体の美しさとポジションの厳格さが特長的で、あらゆるメソッドと比較してやっぱり一番見ていて気持ちいいな!という気持ちになります。(マニアックすぎて伝わらないと思いますが)ポジションの正確さ、上体と脚のコンビネーションから、舞踊の魂を感じるのですよね。もちろんほかのメソッドにも良い点はあり、ストーリー性や感情移入に優れると感じる点もありますので、一つの指標で比較しようとするのはナンセンスです。
現代では国のメソッドの違いはどんどん薄れてダンサー自身も多国籍になっていますし、振付も多様化しているため一つのメソッドに固執するような時代ではなくなってきていますが、やはりバレエの真髄にはワガノワなくして語れないのは間違いありません。
日本人は骨格が違うとか、プロポーションの違いももちろんありますが、それよりも踊り心の深みが伝統的に受け継がれていることをひしひしと感じます。そういう情熱にふれて私自身の中にも燃えていくものが感じられる。バレエを見に行くことで、聖地巡礼しているようなものです…
翌日は、くるみ割り人形も見に行きました。また次のブログで。