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《星彩歌》ベートーヴェン・フリーズの絵を予習しておこう!

バレエ《星彩歌》の主題であるクリムトの《ベートーヴェン・フリーズ》について、さくっと予習をしておきましょう!

とにかく大きいが、展開はわかりやすい

ベートーヴェン・フリーズは、とても壮大な絵でこんなに流れがあります。(実際はこの一枚ずつのパネルが横並びになります)

「なんだか難しそう?」と思うかもしれませんが、クリムトは壁画のために描いた構図なのでぱっとみてわかりにくいかもしれません。

ベートーヴェンをテーマに、クリムト以外にもさまざまな芸術家たちが彫像、壁画、美術工芸、建築などで表現した「総合芸術イベント」のための作品でした。

初心者の方も気軽に世界観を楽しんでいただけるようにかいつまんで説明します。

ベートーヴェンの交響曲第九番をとらえている絵です。長い壁画であり、一面の横並びではなく、コの字型に空間を囲むように構成されています。

全体で3つの場面として構成されています。(左→正面→右とつながります)

第一場面 第一楽章

第二場面 第二楽章

第三場面 第三〜四楽章

音楽と絵画〈下〉マーラーとクリムト、民族楽派から20世紀までより参考)

音楽を視覚化するように、第九の世界感を絵に表しています。クリムトは第九を解釈するために、リヒャルト・ヴァーグナーの叙述的な解釈を参考にしたそうです。

第一場面 甲冑を纏う強者

幸福を求める人々の精霊が上空を舞っています。空白の間が多いことは、日本画(浮世絵)によるジャポニズムの影響もあるのではないかと考えられています。

黄金色の甲冑を纏う強者がここにいます。これはクリムト自身を表しているとも言われます。この強者は、「苦しむ人間」から「敵対する力」と戦うことを懇願されています。

甲冑で武装し戦おうとする騎士には、女性たちが祝福しています。

上空にいる「幸福を求める精霊」は、第三場面まで連なっていきます。

第二場面 敵意に満ちた力

急におどろおどろしい場面になります。左から、3人のゴルゴンと巨大な怪物と娘たち、右には巨大蛇の前に悲嘆する女性がいます。グロテスクでわかりにくいかもしれませんが、苦悩と戦うべき対象とも取れるでしょうか。

その上には幸福を求める精霊が浮遊しています。

ゴルゴンは、病気、狂気、死を示しています。娘たちは、好色、不貞、不埒を示しています。こちらも人間の邪魔をするものを示しているのでしょうか。(女性関係が複雑であったクリムト自身の敵だったのかなとも察してしまいますが…)

こちらは「悲嘆する苦悩」。お化けのようなげっそりした女性の背後には巨大な蛇がうめつくしています。

ほかの場面が黄金色に輝く中で、こちらの場面は地獄のうごめくような不気味さを感じます。

歓喜とは正反対の世界でした。ここからどのように展開するのかが私の好きなところです。

第三場面 この接吻を全世界に!

地獄のような場面を抜けると、また精霊がいます。「ああ、ちょっと見慣れてきた」と少しほっとしてきました。そこに、詩歌(ポエジー)の象徴である竪琴をもった女性が現れます。

苦悩にさいなまれながら、詩に救いを見出すのです。

第九も言葉を持つ交響曲です。ふつうは管弦楽でのみ演奏されるところに、ベートーヴェンは人間の声をのせたのです。

単に美しいから合唱を入れたというわけではなく、人間の声楽という音楽性が、独自の表現のために必要であったのだろうと考えられており、私はそのことに大きく共感します。オーケストラのハーモニーだけの世界も大変美しいものですが、人間の声というのは、やはり人間にとってコミュニケーション手段でもあり身近な存在の音です。

そして人間が声を出すときはたいてい言葉を発します。言葉の力、言の葉の力を音楽にのせたのが第九の魅力であり、言葉を詩になぞらえてこの美しい竪琴の女性に表したクリムトの感性に共鳴しました。

そして、かの有名な「この口づけを全世界に!」につながります。シラーの詩にも「接吻」の姿が書かれています。

歓喜の歌を歌う、天使たちのコーラス。

まるで、太陽神に囲まれているのではないかと錯覚してしまいそうな、黄金色のエネルギー溢れる接吻の光が、全世界に四方八方へときはなたれていくようです。

星彩歌は詩から救いを見出し幸福へとつながる踊りへ

星彩歌のバレエ作品では、特に第四楽章の第8〜第9(最終)パートを取り上げています。

第8パートは、前の流れから一息おいて、間奏的な流れに入るところになります。美しい女性のソロから徐々に盛り上がります。

さらに第9パート(最終)は最高潮の合唱となっていき、パワフルな躍動感を踊りに込めていきたいと思います!

「バレエに慣れていないけど大丈夫かな?」という方も、【全身からパワーを出す】ということをテーマに楽しく踊っていきましょう!

有名な《接吻》へのきっかけになった

こちらの絵をきっかけに、クリムトはさらに独自の表現手法を尖らせていくことになります。有名な接吻もこの壁画をきっかけに発展した形なのではと見られています。

ベートーヴェン・フリーズに用いられた技法も、近代絵画らしからぬ、漆喰にカゼイン絵の具という合わせ方で、クリムトの革新的な名声を確立させたといいます。

作品の背景

《ベートーヴェン・フリーズ》は、革新的な芸術活動を目的とした「ウィーン分離派」という団体によるベートーヴェンを主題にした展覧会のために、クリムトが描いた作品です。

終了後は撤去するために簡単な素材で描かれていたはずが、コレクターに買い取られたことが今につながり、現在では見直されて作品としての価値を重要視されています。

2019年の日本で開催されたクリムト展では、実物大に精巧につくられた複製品が展示されました。オーストリアで観るよりも近い目線で展示されて細部を確認しやすくなっていたそうです。

「フリーズ」とはもともと建築用語であるそうですが、壁に描かれた絵、そして絵巻物のような長い絵のことを指しています。

交響曲第九番は合唱が付いているように、言葉の意味が大きく占めている交響曲で、シラーという作家の詩をもとにベートーヴェンが歌詞をピックアップして音楽にのせています。

ウィーン分離派展では、クリムトが初代会長を務めていた期間に特に盛り上がりを見せ、他にもジャポニズム展や様々な画期的展覧会を打ち出しました。ときには検閲に引っかかることがあっても、保守的な団体から一線を画す革命的な活動を行い、クリムトが脱退したのち徐々に衰退していきました。

革命というのは、政治にしろ、社会にしろ、芸術活動にしろ、勇気と挑戦のパワーが結集しなければ成り立ちません。

「平和ボケしている日本」と揶揄される昨今ですが、ヨーロッパは特に革命やナショナリズムを戦いながら勝ち取ってきた社会であり、その影響があって今の日本もならうように近代化を成し遂げたのだと私は思っています。

あまり難しく考えすぎず、いまこの時代に生きている自分のエネルギーを放出させるような場をみなさんと作り上げたいと思っています。

11月16日(土)に初回、そして12月24日(火)にもレッスンでチャレンジします!みなさんもぜひ体験しにいらしてください。

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