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「アーツ・アンド・クラフツとデザイン展」松本市美術館

アーツ・アンド・クラフツ展(松本市美術館)の鑑賞記録です。草間彌生さんの展示とともに観てきました。

アーツ・アンド・クラフツ運動とは、英国のウィリアム・モリス(1834年〜1896年、デザイナー、思想家)が提唱したデザイン運動のことで、「失われつつある職人の手仕事の復興」と「美しい暮らし」を呼びかけました。

ウィリアム・モリスは「モダン・デザインの父」とも言われています。

トップ画像のポスターになっているデザインは「いちご泥棒」というウィリアム・モリスの有名な作品ですね。

当時ヴィクトリア朝時代のイギリスでは産業革命が始まり、大量生産による質の落ちた生活に必要な品々が多く市場に出回っていました。

それまでの職人によるきめ細やかな意匠や民芸品の価値を守ろうとする運動でした。

ウィリアム・モリスのテキスタイルや柄は現代でも使われていることが多いので、見たことがある方も多いのではないでしょうか。

公式サイトのパンフレットより アーツ・アンド・クラフツとデザイン ーウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまでー | 松本市美術館

プリント、テキスタイルの布地だけでなく、椅子や調度品、ジュエリー、ガラス、壁紙、書籍などもありました。

ウィリアム・モリスだけでなく後世のクリエイターに受け継がれたことと、ヨーロッパだけでなくアメリカ(フランク・ロイド・ライトなど)にも影響が広がっていたことを展示されていました。

この時代は20世紀初頭ということもあり、グスタフ・クリムトが中心にいたウィーン分離派も同時代で影響を受けているといいます。

2019年に六本木・国立新美術館で「ウィーン・モダン展(クリムト、シーレ 世紀末への道)」でも、当時のウィーン、パリなどで流行っていたモダンな生活と手仕事の質の高さについて鑑賞したことがあるので、アーツ・アンド・クラフツの雰囲気と重なるところがあるなぁと思いながら観ていました。

色遣いやモチーフは自然のものが多かったり、現代からするやさしい配色でもあり、「古き良き」という感じもしますが、それでもデザインに対する全体的な作りや構造的・体系的にきちんと作られているというのはなかなか現代には珍しくなっている品々ばかりでした。

作り手がいなければ生まれないし、使う人がいなければ作られないというのも事実なんだろうと思います。

当時でも「裕福な家庭のためのもの」という見られ方もあったようですが、長い年月をひいてみると、歴史上の美しいものは貴族や裕福な市民が庇護していたというのはよくあることで、貧富の差はあったとしても文化としての何世紀もまたいで成長していくタイムラインにとっては、モダン・デザインの黎明期に大量生産だけでは補えない価値があることを提唱したウィリアム・モリスの影響は大切だったのでしょうね。

あと、好きなアーティストでウォルター・クレインの作品もありました。

私はこちらの本が好きでウォルター・クレインを知り、アーツ・アンド・クラフツの方とは後から知りました。

現代でもハンドメイド・カスタムオーダー・一点物の価値は高いですし、実際に20世紀初頭、日本だと大正ロマンのアンティーク、レトロな世界に良さを見出す人は多くいるので、アーツ、アンド・クラフツの作品群からも現代に通じる視野の持ち方を見出せるものですね。

松本市美術館での展示は本日で終わってしまったようですが、どこかで機会がありましたらぜひ。