ジュエリーの老舗「ショーメ Chaumet」による海外で初めての宝飾芸術展覧会が三菱一号館美術館で開催され、ナポレオンも愛した歴史あるジュエラーの作品を学んできました。
〈ショーメ 時空を超える宝飾芸術の世界〉1780年パリに始まるエスプリ
すごく面白くて、図録も迷わず買い、読み応えいっぱいです。
こちらは撮影可能なティアラのレプリカ。パリのショーメの店舗では、まずティアラを購入する顧客にレプリカを見せながらデザインを検討していくのだとか。
一般人にはとうてい縁のないようなジュエラーですが、この由緒ある文化財の建築をもつ三菱一号館美術館が開催してくれたおかげで、展覧会ではありますがこうして目で見て体で感じて接点を持つことができるとはなんてありがたいことでしょう。
麦の穂のティアラ。
ショーメは古くから麦の穂のモチーフが大切な存在だったそうです。このポスターに掲載されている麦の穂も実際に見ることができました。豊穣と繁栄のシンボル。
麦の穂も、昔からなんとなく綺麗な形だなとは感じていたけれど、宝石として具現化されると、黄金比のように見えてきます。
そして均一にしないで穂の重なりにわずかなゆらぎをもたせているところに感動した。
こちらは撮影可能な特大パネルより。
植物や虫などのモチーフを見ていると、自然を模倣するというレベルではなくて、細部がリアルだからもはや永遠に生き続ける存在にさせてしまうんだなと思いました。
バレエのティアラがショーメ展のあれほどだったら?と想像すると、怖くて回転とかジャンプとかできないかもしれません。(笑)
ただ、実際の肖像画に、まさにジュエリーが描かれているという凄味…。本当に、芸術です。
スケッチも展示がたくさんありましたが、絵画を仕上げるように細かく光と影を計算しているのが読み取れて、興味深かったです。
石のどの部分に光が反射して、影がどこに出て、石の光がたまる場所もしっかり考えてデザインしているんだなということが伝わってきました。
身につける人と宝石のスケッチもあり、動きや角度も細かく考えているんだなぁ…と。
実際、ティアラは自然な動きが出るような構造をしている土台もあるようです。植物や花をモチーフにしているからこそ、こういうリアリティは本当に感動モノなんだろうな…(着けていないとわからない部分)
デザインの様式も、作品によってアールデコ、バロック、ジャポニスム、シュルレアリスムなどと、美術の画風と同じようにスタイルをもたせて作られていたんだなというのが単に贅沢品・お洒落のためでなく、芸術美学たるゆえんを感じました。西洋絵画の潮流と同じ歴史をたどっているからこそ、芸術品としての存在意義がある。これも良い気づきでした。
あとは、とにかくすべてが繊細で、細かくて、ミクロの世界かと思うほど。単眼鏡を見てみたいほど。照明も暗めなので、近くで覗き込んで見たくなります。
聖書にしても、装飾品にしても、ミニアチュールを見ると尊い気持ちになります。
ぶどうや蔦のモチーフの細やかさは忘れられません。
バヤデールネックレスも観たかったんです。バレエのラ・バヤデールと同じ、バヤデール。
撮影できないから、こちらを拝借…
【ショーメ展/作品解説⑧】
— 三菱一号館美術館 (@ichigokan_PR) 2018年9月7日
この紐のように見える部分、すべて真珠で出来ています・・・!本作はインドにインスピレーションを受けて制作されたソートワール(ロングネックレス)です。たっぷりとしたケシ真珠に、青く澄んだサファイアが組み合わされ、優雅で贅沢な印象を与えています。 pic.twitter.com/DSPnqLIaZt
タッセルのロングネックレスで、驚くほど細かいケシ真珠の連なり。サファイアの柔らかいブルーとの配色がバヤデールらしかったです。
インドや中国、そして日本などからも異文化のインスピレーションを取り入れながら、植物、花、虫などの生き物の造形美をも普遍的な美しさにしてしまうジュエリーデザイナーと職人たちの神がかった技術に深く心洗われました…
そして、見たことのない宝石の種類もたくさん見れて面白かったです。ぶどうの実になっていた、モーブ真珠美しかったなぁ… ダイヤモンドだけではなく、ラピスラズリ、オパール、サファイア、ルビー、ピンクトルマリンなどもしっかり配色を計算してデザインすると絵画から飛び出てきたような立体の美しさでしたね。
まだまだ印象に残った作品がたくさんあります。
図録をゆっくり読みながら、思い出したことがあったらまた書こうと思います。
会期が9月17日まで、あとわずかです!