山の滞在から帰って家に着いたのは、夜遅く。眠い目をこすって、重い荷物を背負って部屋の中へ入っていきます。
いつも住んでいる見慣れた部屋のはずなのに、頭にパッと浮かんだことは、
「あ、うちの家って、こんな空間だったなぁ。」
と懐かしい感情でした。
いやいや、自分の家でしょ!と、ツッコミたくなりそうですが、ふと自然に自分の家を新鮮に感じたものです(笑)。
コロナの影響で家の時間が長くなりがちな今、環境を変えられないことで、気分転換や視点を切り替えることすら、難しくなってしまいがちです。
こんなに家の中の光景を忘れてしまうのはコロナの影響があって以来、初めてでした。
それくらいに旅先での1日1日に集中できていたという尺度になりました。
たとえば、センス・オブ・ワンダーのように、どんぐりから芽を出している若い葉っぱを見つけ、小さな生命の誕生に感動しました。(はじめの画像)
これは初めて見つけることではないのですが、ごく数センチの生命体の「生きる!」と言わんばかりのパワーがひしひしと伝わってきて、こちらも心がキラキラするのです。
こうした大自然での素敵な時間が私の中で深いマインドフルネスになっていたのです。
旅は日常を忘れて、目の前にあることに意識を向けられます。
そして旅にはもう一つ大事なポイントがあります。
それは、自分の殻を知ることです。
日常で知らず知らずのうちにしがみついてしまいがちな顕在意識は、なかなか手強いものです。
成長を妨げたり、心のブレーキをかけてしまうこともあります。
クリエイティブなアイディアを練りたいときや、勇気を出して新しいことをやりたいとき、他人の目線を気にしすぎずに自分のカラーを表現したいときに、日常で変に凝り固まった観念や「どうせ〜」「だって〜」というような考えが邪魔をするのです。
でも日常の思考を忘れきってから、同じ課題に戻ってくると、まるで違う自分から答えがどんどん見つかっていくものです。
そんなタイミングを私は「リセット」と呼んでいます。
良い旅は日常を忘れさせるリセット。
日常に慣れ親しむほど、リセットが必要なことすら気づかなくなってしまう。
暴走し始める前にリセットして、違う視点を見つけたり、別の側面を理解したり、それまで気づかなかった答えを見つけるのは感性豊かに生きる上でも大切なことです。
日常を忘れるというのは、かんたんなようでいて、奥の深い技術です。忘れようとして忘れられるものではないからです。
みなさんも旅ができれば旅をしてみましょう。
ほどよく日常からワープして非日常や異空間に飛び込んでみたり、新しいことを始めてみたりでもいいのです。
旅行そのものでないとしても、いろいろな意味で「日常から非日常への旅」に出かけましょう。
「旅に出る前には予想できなかったこと」にどれだけ出会えるか、自分の心身を研ぎ澄ませておきたいとも思えてくるのです。