バレエ作品「さくら」新作を振り付けるまでの振付ストーリーを紹介していきます。
(3)花びらのアームス
(3)花びらのアームス
実際に桜を踊りにしようと考え始めたとき、振付の核になるようなテーマをまずは考え始めました。
「愛の夢」の音楽は、始めからサビのような主題となるメロディーになります。
前奏なしでいきなりサビの音楽が始まるというのは、今の令和時代の感性にも似たものがありますが(今は前奏が長いとポップスは流行りにくいというトレンドのこと)、1845年ごろ作曲の意図はどうだったのか分かりませんが…
私の構成イメージとしては、サビのようなテーマの3回をパートの節目にしながら、流れを作ろうと思い立ちました。
花びらの動きを観察した
まずは「桜」という存在にスポットを当てることから、作品を始めることにしました。
桜の木をイメージしてもらうために、桜の花びらの動きを特徴的にあらわそうと思いました。
桜の花びらの動きを観察したときに、くるくると動線を描いているのを感じました。
ひらひらと表と裏にひっくり返りながら、風と共に散っていきます。
繰り返しのようにも見えますが、単に一定の動きの繰り返しだけではなく、自然な揺らぎも感じました。
そこで、指先と手のひらで曲線状に花びらを表現することにしました。
バレエでは白鳥のアームスのように感情を表現を指先に込める事がよくあります。
実際に創作で踊ってみると、桜で表現したい気持ちが自然にのせやすいことに気が付きました。
アームスで桜を表現すると言うのは私自身はじめての試みでしたが、なんだかしっくり来てとても気に入りました。
桜のアームスを思いついてからは、曲全体の流れを想像しやすくなりました。
3回あるテーマのうち、最初は花びら1枚1枚の存在に目を向けること。2回目は美しさと儚さに焦点を当てること。3回目は今と言う瞬間に感謝を込めること。
このような一曲の中での変化を、自然な成り行きで思い浮かびました。
音楽の特徴としても、中盤にドラマチックな旋律が盛り上がります。
そこで、美しさと儚さから広げて、生命の生と死についても思い浮かべながら振り付けを考えました。
こうしてかくと仰々しいような、それでいて抽象的な概念のように思えますが、創作のプロセスをしている最中の私の脳は、詩人になったり、作家になったり、画家になったり、書家になったり、いろんな視点で桜と言うテーマを作り出すようになります。
踊りを作るのになぜ他の芸術家のような視点を持ち出したくなるのか、自分でも疑問ですが、こうしたプロセスを踏むと、私なりの答えが見えてくるのです。
創作活動において絶対的な答えと言うのはありません。
決め手となるのは自分の直感と感性になります。
主観的な判断にはなりますが、それでも自分なりのロジックを持っています。
すべてを言語化できるわけではありませんが、自分なりの答えの導き方というのは、私だけではなく芸術の創作活動する人たちによく共通することなのではないかと思います。
それがその人の表現のスタイルであり、世界観であり、個性であり、創造性なのだと思います。
創作プロセスをしているときの様子。創作する時は1人でじっと考えたいことが多いので、ライブ配信をしたのは初めてでしたが、皆さんと桜が咲いている時期に桜の創作をしていると言うストーリーを共有できたらと思いました。実際にこの時に考えていた桜の花びらのアームスが、作品全体を導いてくれました。みなさんからの反応もうれしかったです。
つづく
バレエ「さくら」の創作プロセス(4)松尾芭蕉の俳句から日本人の美的感性に立ち返った - バレエヨガインストラクター三科絵理のブログ
6/12(日)「さくら」バレエ作品を踊るレッスン ♪リスト「愛の夢」初級から参加OK
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