よく大人バレリーナの皆さんとレッスンをしていると、
「お腹を凹ませていると呼吸が止まりそうになるんです。息を吸うと、肩が上がってしまうし、どうしたらいいんでしょうか?」
という素朴な質問をいただきます。バレエを踊り慣れている人は、おへそを凹ませるようにお腹を薄っぺらくしながらも、踊りに耐える呼吸量を行なっているものです。でも、いったいどうやっているんだろう?と、疑問に思っている人はいませんか?
よく、リラックスさせるためや瞑想などのときには、胸式呼吸と腹式呼吸もふくめた「完全呼吸」をするように言われることがあります。ヨガレッスンでも聞いたことがあるかもしれません。
呼吸をするたび、横隔膜が動きます。腹式呼吸のように、肺の膨らむ最大限の体積を確保しようとすると、内臓が外に押し出されてお腹が膨らむように見えます。(腹式呼吸のメカニズムについての記事はこちら)
でも、バレエでその呼吸を行なってしまうと、息をするたびにお腹が出てしまい、「お腹が出てる!」と注意されかねません。
腹式呼吸に頼っていると、バレエらしい細い軸の姿勢をキープすることができないのです。バレエの動きを支える体幹の筋肉の深層部にある「腹横筋」を絶えず働かせて、これがお腹を凹ませる深層の腹筋であり、体幹部の土台をつくっています。腹式呼吸をすると、こうした筋肉がゆるむことになり、「お腹が抜けている」「お腹が出ている」という状態になってしまいます。
また、バレエの衣装を考えてみてください。
衣装のボディは、背中のホックをサイズぴったりに合わせますので、お腹を出して息をするようでは呼吸が苦しくなってしまいます。
つまり、バレエでは、お腹を凹ませ続けながら深呼吸ができる必要があるのです。
では、どうやったら呼吸のコツをつかむことができるでしょうか?
その練習方法を動画で紹介しました。
バレエのお腹を凹ませた姿勢で深呼吸を行う練習方法
ベルトやタオルなどの引っ張っても伸びない長さのあるものを用意します。
背中の肋骨あたりをあてがうようにして、両端を胸の前に持ってきます。
両端のそれぞれを、左右反対の手でつかみ、胸の前でベルトがクロスするように持ちます。
背すじを伸ばし、肩を下げて姿勢を整えましょう。
そこから、息を吐いてベルトが少し前に引っ張られるように肋骨を閉じます。
次に、息を吸いながら、背中側の肋骨同士のスペースが開くようにしてベルトは肋骨の動きに合わせてゆるませます。
(手の位置が変わっているのがわかります)
ベルトをあてながら、こうした呼吸を繰り返していきます。
肩はリラックスして、胸郭が360度広がるのを感じよう
日常生活ではなかなか意識しない肋骨の動き。はじめは背中を広げる感覚が難しいかもしれません。
でも、根気強く続けていると、徐々にコツをつかめるようになります。筋トレというよりも、筋肉に動かし方を覚えさせること。リハビリのようなイメージです。
私も、昔初めてやったときは今ほどうまく動かせませんでしたが、毎日やって数週間でかなり変化しました。慣れれば、ベルト・タオルがなくても、体で覚えて意識できるようになります。
バレエを踊るときだけでなく、美しい姿勢を保ちながらパフォーマンスしなければならないスケート、ダンス、そのほかスポーツにも、胸郭を広げて呼吸量を増やすことができるので体にもメリットがあります。
バレエのレッスンで、息が苦しくなってしまったり、息が上がりやすくて困っているという人は、子供から大人までできる練習方法なのでやってみてくださいね。
腹式呼吸のメカニズムを知りたい人はこちらも参考に