バレエヨガインストラクター三科絵理のブログ

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英国ロイヤルバレエ ロミオとジュリエット マシュー・ボール&ヤスミン・ナグディ

英国ロイヤル・オペラ・ハウスシネマシーズン 2018/19 の新作《ロミオとジュリエット》主演マシュー・ボール&ヤスミン・ナグディのライブビューイングを鑑賞しました!

英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2018/19 ロイヤル・バレエ「ロミオとジュリエット」:映画作品情報・あらすじ・評価|MOVIE WALKER PRESS 映画より

ロイヤルの未来を担う若いスターの二人による、初々しい世界にうっとりしました。

ジュリエットのヤスミン・ナグディは安定した技術力で、ジュリエットに求められる演技派の踊りを披露。ロミオのマシュー・ボールは恋に落ちた青年の躍動感とジュリエットをなんとか手に入れようとする求心的な勢いが役を体現していました。甘いマスクも人気な方ですが恋に落ちていくロミオの表情がリアルで、ヤスミンが徐々に心を開いていく姿に目が離せなくなります。

ロミオとジュリエットはシェイクスピアの世界観をバレエで存分に楽しめるように作られたマクミラン版が傑作となり、今や世界中で上演されている作品。

お家元の英国ロイヤルバレエはシェイクスピアの国でもあり、初演を行ったバレエ団としての威信もあることと思います。古典を蘇らせつつ細部に工夫を重ねながら輝きを磨いている印象を受けました。

場面のつなぎとなるストーリーテリングを丁寧にわかりやすくしていたり、衣装のデザインはほぼ変わっていなくともより生地感や細部のデザインに磨きをかけていたりと、単なる焼き直しではないことが伝わってきます。

映像のインタビュー中にあった武器の小道具を作るエンジニアの方のお話では、小ジュリエットが最後に胸を突き刺す小刀は刀の部分をスイッチで収納できる構造があり、ダンサーは勢いよく本物の刀を体に当て込みながら安全に自殺の演技ができるようにされています。そして、床に落としたときの重量感も本物らしくするように、狂気のリアルさを増しているのだそうです。ダーシー・バッセルがかつて主演していた頃よりも重いと話していました。さすが、ドン・キホーテでもサンチョパンサが本物のリンゴをかじっていただけあって、演技の迫真さは演劇の国のDNAを背負っているのですね。

こうした文学作品の原作を基にして、世界中のバレエ団や観客らが一つの世界観を共有しながら経験をともにできるというのは素晴らしいことだなぁと思います。

個人的なことですが、私は昔子供の頃ジュリエット役のバレリーナたちの姿を雑誌や映像でしばしば観ましたが、どうも悲劇の結末を想像するのがつらくて、あまり好きになれなかったのが正直な感覚でした。

みなさんもあまりに悲しい作品だともう一度見れない…という映画などありませんか?そんな感覚です(笑)

でも大人になるにしたがってシェイクスピアの原作の美しい世界を感じることができ、悲劇のドラマ展開の中にも人物ごとの道理や因果関係を理解し、殺し合いにいくまでも経緯があることを想像するとまた作品の奥深さを感じられてより一層面白くなりました。その背景を感じ取れるような演出になっていると、マニアックにも嬉しくなったりします。

殺陣で戦う場面では、フェンシングとほぼ同じ構造で飾りをほどこし剣が転がっていかないような機構にされているようです。観ているものとしては、緊迫した殺陣の演技でハラハラドキドキします。毎回さまざまな役をこなすキャラクタープリンシパルのギャリー・エイヴィスさん始めとして、細部まで気を配るダンサーの意識の賜物でした。

みなさんも機会があればロミオとジュリエットご覧になってみてくださいね。

【振付】ケネス・マクミラン 【音楽】セルゲイ・プロコフィエフ 【指揮】パーヴェル・ソローキン 【出演】ジュリエット:ヤスミン・ナグディ ロミオ:マシュー・ボール マキューシオ:ヴァレンティノ・ズケッティ ティボルト:ギャリー・エイヴィス ベンヴォーリオ:ベンジャミン・エラ パリス:ニコル・エドモンズ キャピュレット卿:クリストファー・サウンダーズ キャピュレット夫人:クリスティナ・アレスティス 乳母:クリステン・マクナリー 三人の娼婦:ベアトリス・スティクス=ブルネル、ミカ・ブラッドベリ、ロマニー・パジャック マンドリン・ダンス:マルセリーノ・サンベ ローレンス神父:ジョナサン・ハウエルズ ロザライン:金子扶生

http://tohotowa.co.jp/roh/movie/?n=romeo-and-julietより