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オシポワ主演『メドゥーサ』シェルカウイ振付作品

昨日のブログに書いた、ロイヤルバレエシネマライブビューイングのトリプルビルの続きです。

トリプルビル『Within the golden hour』に続いて、第2部は『メドゥーサ』シディ・ラルビ・シェルカウイ振付作品でした。シェルカウイはベルギー出身の振付家で、ローレンスオリビエ賞を受賞しており、世界で制作するほか、日本の手塚治虫作品に造詣が深いことで知られ、森山未來さんとの共同プロジェクトも意欲的に取り組んでいらっしゃいます。シェルカウイ氏作品を観るのは初めてでした!

かなり刺激的で、独創性の際立った、現代版ギリシア神話の世界です!!


Medusa – Sidi Larbi Cherkaoui (Natalia Osipova, Artists of The Royal Ballet)

彼のプロフィールを見る通り、ベルギー、日本、そしてお父様はモロッコ人、また少林寺や神話などあらゆる文化圏の理解と精神性の影響があるのか作品にも独特のオリジナルな世界観があふれていました。

メドゥーサとは、ギリシア神話の登場人物。シェルカウイ氏が神話の世界をバレエに掘り起こし、英国ロイヤル・バレエ団で初めての振付を手がけ、その初演映像を観ることができました。主演のメドゥーサは、ナタリア・オシポワさん。極めて高い技術力にその演技力が、メドゥーサという美貌と怪物を演じ分ける女性にぴったりのはまり役でした。

メドゥーサ(オシポワ)は、アテナ(オリヴィア・カウリー)の巫女の一人。アテナはたくさんの巫女に囲まれていますが、メドゥーサはひときわ美しく目立っていました。そこに目をつけたポセイドン(平野亮一さん)は自分の物にしようとメドゥーサを捉えてしまうのです。それを知ったアテナは怒り、メドゥーサへの罰として怪物に変身させられてしまいます。美しい髪は毒ヘビという神話の通り、オシポワの髪はヘッドピースの飾りを被せられ、顔には黒の太いラインが額から鼻筋にかけて塗られ、美しいドレスも悪魔のような黒赤の衣装に。踊りも怪物そのもので、同じ人物には見えない豹変っぷりです。観ているものとしては、巻き込まれてしまったメドゥーサが気の毒でなりませんが、とにかく荒々しい怪物です。

兵士たちをどんどん打ち負かしていく中で、ペルセウス(マシュー・ボール)もメドゥーサと戦い、頭を切り落とすかのように髪の毒ヘビを剥ぎとります。(演技では実際に首を取られたように見せていて、さすがでした)怪物のメドゥーサは倒され、元の美しい女性に戻ることができ、狂気的な豹変から戻った彼女は精神を(あるいは魂を)解放されたかのような姿で終わるのでした。

ポセイドンはギリシア神話でも女性に手を出す神ですが、わずかな立ち振る舞いでも男性の神として厳かな存在感を醸し出す平野さんの演技は素晴らしいものでした。ドン・キホーテのエスパーダといい、冬物語といい、舞台にいるだけで口数少なくとも背中でなにかを語ってくる不思議なオーラ、なかなか出せるものではないと思います!!

オシポワさんの怪物の演技は、とても高い技術力が求められる踊りで、かつそれを凌駕する圧倒的な恐ろしさ・型破りな破壊力があってこそ、説得力をもたせるものでした。これほど体現しているバレリーナ、唯一無二の存在だと思います…!!!(次に主演する方にかなりハードルが上がりそうな。。)

ギリシア神話の舞台にリアリティを持たせるのに、ダンスのほか、舞台美術と衣装が不可欠と思います。舞台美術はすっきりとしながらストーリー展開の感情表現に寄り添う現代的なデザインで、天井から降りてきた柱の集合体が世界史で見た神殿のようにも見えてくるのです。

また、衣装とヘッドピースのデザイン制作をしたオリヴィア・ポンプのアイディアも素敵でした。

初めのアテナと巫女たちは長めのスカートのドレスにストールをかけており、それがどこか神格化された世界を想像させました。先にも述べた怪物のヘッドピースは激しいパドドゥでも落ちないようあごにしっかり固定され、黒いドレスとも違和感ないつくり。またペルセウスたち兵士は作業服のように全身を包み透け感があるので彫刻のようにも目に映りました。

インタビューでシェルカウイ氏が語っていたことで、ペルセウスがメドゥーサと絡む箇所での解釈は、ギリシア神話から独自の解釈を加えたことにも言及していました。こうした物語をバレエ化されると、どの程度原作を再現するのか・それとも再構築するのか?に私は一番興味があります。どれが正解かはその作品によって異なりますし、解釈や受け手側へのねらいもさまざま。ギリシア神話にみる「因果関係」と表現していたのが印象的でした。

『メドゥーサ』機会があればみなさんもぜひご覧になってみてください!

次は、トリプルビル最後のプログラムでこんなに個性的な作品続きにも関わらず一番衝撃を受けた『フライト・パターン』の所感を書きます。

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