バレエヨガインストラクター三科絵理のブログ

バレエヨガインストラクター三科絵理

江戸時代の植物柄は、今見ると新鮮だった。(百草蒔絵薬箪笥)

産後一人で初めてゆっくり美術館へ行った先は、東京南青山の根津美術館。

まだ行ったことのない日本美術の展示に出かけようと思い、「百草蒔絵薬箪笥と飯塚桃葉」を鑑賞しました。

百草蒔絵薬箪笥は、かんたんに言うと江戸時代の大名が使っていた、薬を持ち運ぶ箱で飯塚桃葉は作者です。蒔絵、銀などを使った豪華すぎる大名道具。

銀の合子という箱は四角い箱の中に丸い箱をパズルのように機能的に収納できるようにもなっていて、中で箱がずれないし、収納量も増えるので、製作工程は手間が増えるのでしょうが、さすが日本らしいなと思いました。

【根津美術館】 - Nezu Museum -

展示を知り私は無知の状態でしたが、新しい刺激に触れて感性を研ぎ澄ませたい、という思いが募りました。

実際みると、私でも漆の植物模様の美しさにうっとりしました。

植物柄でこんなに丁寧なものはなかなかお目にかかれません。

花柄やボタニカル柄は日常でもさまざまな日用品、布地、服、小物などで見ることがありますが、描き方やデフォルメの仕方やデザイン構成や色彩の具合もいろいろです。

大名道具として当時の技術が結集されている様には、現代では見られない緻密さに、じっと見入るものがありました。

漆でできる色彩が限られているからこそ、考え抜かれた表現なのだろうと感じます。

それがまた、品がよく、心地よい落ち着いた存在感でした。

日本人でよかったと思うのは、和食をいただく時だけではなく、こういう侘び寂びの美しさを感じる瞬間だなと思います。

ふだんは西洋画を好んで見ることが多かったですが、最近芸術鑑賞から離れていたからこそ新鮮な目で日本美術を見られました。

実際に行ってみて、まっすぐにシンプルに日本の美を受け取ることができました。

実は最近育児の忙しさで心が「シンプル」を求めていて、なんだかリンクしました。

それはすべてを無機質にしたいということではなく、心や魂を温めてくれる物を大切にして整理したいという気持ちの波がきています。

昔の価値ある物はなぜ何世代にも渡り人々に受け継がれてきたのか、普遍的に良いと受け取られるものは何がそうさせるのか… こうした美術品を見ていると忘れかけていた物差しを思い出すかのようです。

江戸時代当時からすれば庶民には縁遠い現実離れした技巧なのかもしれませんが、私たちが「昔にこんな技術があったのだ」と物を通して知れるのは良いことだと思います。

例えばフランスのマリー・アントワネット王妃も当時の職人技術を結集させた芸術品のようなドレス、刺繍、ティーカップなどを残して今もその品々に多くのファンがいますね。私も前に日本で開催された展示を見て刺激を受けました。

その日根津美術館は日本人よりも外国人観光客で賑わっていました。エントランスの回廊は竹林で趣きがあり、仏像や茶道具や掛け軸などの展示も見られて、日本庭園もあるので、禅の感覚を味わいたい人にもぴったりだと思いました。

美術館で刺激された感性はどこに役立つのかすぐに分からなくても、経験が生活の中に少しずつ根付くものです。

今後の創作活動でも、日本らしさをなんらか取り入れたい気持ちがあり、凛とした空気をまとって味わいたいと思います。

あとは暮らしの中で日用品を見る目です。私の家の中にはお宝はありませんし、全然高価な物ではありませんが、昔から日本人が愛用してきた鉄瓶、急須、茶器、花瓶、手作りの品々… いろんな物を見直すことがあります。

物のオーラを見るかのように… しまっていた物を整えたり、手入れをしたり、飾り直したりするときにも美術館で得た刺激がヒントになりそうです。